コラム

世界恐慌は絶対に来ない

2020年03月27日(金)11時12分

いったいどっちなんだ。世界恐慌は来るのか来ないのか。人々は戸惑うばかりだろう。

恐慌は来ない。
世界恐慌は絶対に来ない。
なぜか。
すべての情報が間違っている、少なくともミスリードであるからである

なぜそのような誤解を生む情報が世の中にあふれるのか。
それは、情報の発信者たちは、自分勝手に世の中を動かそうとしているからである。

まず、米国メディアは、米国が危機に陥って初めて真剣に取り組み始めた。それまでは、他国の不手際や制度の欠陥が話題の中心、ひどいときには中国攻撃の材料にしていたが、ここにきてメディアの攻撃の方向性は180度変わった。

トランプも変わり身180度を二回行った。最初は楽観することで勇気があるような姿を見せたが、次には徹底的に戦う姿勢を見せ、自分のリーダーシップを見せつけようとした。しかし、経済救済策は、大企業などの支援に偏っており、自己都合だという批判も受けた。さらに、ここにきて、経済が凍り付くことを恐れて、外出禁止は4月上旬までに解除したいと言い出した。

「コロナだからしょうがない」が危険

株式市場関係者はもちろん、もっと徹底的に自分勝手である。最初はバブルを維持するために、中国武漢でのショックを2月中旬まで無視し続けた。しかし、欧州で危機が広がっていることが世界的に認知されると、一気に世界的暴落となった。このときは、GDP30%減少という数字を使い、大恐慌に匹敵する、いやそれ以上だと騒ぎ立て、政府から220兆円の支援、中央銀行から無限の資金供給を引き出した。そして、株価が暴騰すると、GDPが30%減少するのは3か月だけのことで、次の四半期にはV字回復するという数字の方を強調し、経済は健全だから、ただの一時的なパニックだったと言い出し、株式市場を盛り上げている。

誰も言わないから言うが、政治家たちのパフォーマンスは常に大げさすぎるが、今回もいつも通りだ。例えば、都知事の外出自粛要請はやり過ぎだ。東京で増えてきたのは事実だが、絶対水準は低い上に、半分は感染経路が特定されているものだ。一律に経済活動を止めてしまうのは明らかにやり過ぎだ。徹底した手洗い、人混みは避けるが、普通の生活は慎重ながらも続けることが重要である。

それでもなぜ過剰に政治家たちが振舞うかというと、コストがないからだ。経済が悪くなっても、それが自粛要請のせいだったとしても、今の雰囲気ならコロナだからしょうがない、すべてコロナが悪いということで済んでしまう。そして、パンデミックにならなかったときに、ほら、俺が(わたくしが)英断をしたから、これで済んだのだ、わたくしが世の中を救ったのだ、と主張できる。そして、そもそも政治家の本能的欲望として、世の中がどうなろうが、自分が世の中を動かしている、自分が主人公だ、という状況に陶酔する、したい、という性癖がある人が多いことが根底にあるとおもう。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

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