コラム

英国EU離脱は、英国の終わり、欧州の衰退、世界の停滞をもたらす

2016年06月24日(金)19時32分

 そしてこれが欧州全体に広がる。さらに、欧州の経済の伸びは、EUを拡大し続けることによって維持してきた。要はフロンティアを人工的に生み出してきたのだ。中所得国を取り込み、ここを新しい市場とし、同時に安い労働力の供給地とし、いわゆる高度成長を生み出す二重構造を意図的に作ってきたのだ。

 それが終わる。EUの拡大はない。成長は止まる。そして、イギリス以外の国でも離脱リスクが高まるということは、欧州への外からの投資は躊躇される。減少する。世界の中で欧州はおいていかれることになるだろう。

市場はリスク回避へ

 世界は、直接の影響は小さいが、欧州が衰退すれば、世界経済は縮小するから、プラスであることはあり得ない。だから、世界経済もマイナスだ。

 そして、金融市場は、すべてのショックを直ちに織り込もうとするから、為替が動き、リスクテイクは弱まるから株価も不動産も下げる。だからマイナスだ。

 日本は特に為替に過剰反応するから、株価は下がるだろう。実体経済はそこまでマイナスを受けないが、雰囲気に弱い社会だから、雰囲気は悪くなり、雰囲気は株価に過剰に連動するから、雰囲気は一変し、株式市場は下がったままとなるだろう。

 そして、金融市場はいったん大きく下げたあと、過剰反応として戻すだろう。パニックに過ぎない、という解釈を与えるだろう。しかし、この反発は短期にとどまると予想する。なぜなら、欧州危機はリアルであり、長期化どころか、歴史的にここがターニングポイントになり衰退していくから、世界経済へのマイナスは長期に継続し、長期に世界経済、世界市場に影響を与えるからだ。

 英国の終わりの始まり、欧州の衰退の始まり、世界経済、世界市場の雰囲気転換の始まり。これらは長期的に続くだろう。

<ニューストピックス:歴史を変えるブレグジット国民投票

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

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