コラム

マイナス金利で日本経済の何が変わるのか

2016年02月01日(月)18時49分

 また実体経済には何も起きない。日銀への当座預金がマイナスになったからといって、日銀に預けるのをやめた資金が実体経済に回る理由はないからだ。個人の預金金利をマイナスにすることは現実的にはないし、企業への貸出、住宅ローンの金利が下がるとしても、ほとんど意味のない水準であり、これまで十分に下がっているから、金利が低ければ投資する人々、企業はすべて投資してしまっており、今後の投資は世界経済次第なので、マイナス金利とは無関係だからだ。余った資金は、円安確実なので、米国債や欧州の国債、そして国内の不動産関連の債券(REITを含む)へ、金融的投資が行われ、これらの債券の価格は上がるだろうが、不動産の実需は増えないなら、実物不動産は増えず、値上がりだけが起きるだけだろう。

【参考記事】世界人口の半分と同じ富が62人の富豪に集中

 そして、国債金利のさらなる低下は、国庫負担が減り、金融機関の収入が減るという影響しかなく、銀行から日銀へのマイナス金利による所得移転とともに、金融機関から政府へ資金が若干移転するというだけの効果となるだけであろう。

 これは銀行が憎いと思っている人には若干のプラスだが(日銀はこの影響を最小にするため移転額も最小にするため)、日本経済の景気の現状に不安を持っている人にはマイナスだろう。なぜなら銀行の収益基盤が不安定になり、銀行はリスクを取れなくなり、融資には慎重になるからだ。

 つまり、マイナス金利は縮小均衡をもたらし、デフレを再燃させる方向に動くのであり、それ以外の影響はないのだ。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

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