最新記事
シリーズ日本再発見

日本の観光政策は間違いだらけ、「クールジャパン」の名称は自画自賛で逆効果だ

2023年01月12日(木)17時25分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

その一方で、地球上で最もユニークなショッピングセンターに行ってみたいと考えている観光客には、中野は最高の場所です。

中野ブロードウェイは、4つのフロアに個性的なサブカルチャーやアーティスティックな店舗が並んでいます。半世紀前には、ショッピングと住宅の複合施設でしたが、現在では「オタクの聖地」として知られており、世界でも他に類を見ない場所となっています。駅からのアクセスも良く、新宿からも中央線で1駅と大変便利な立地です。

そういった意味からも、外国人観光客に中野へ来てもらうには、中野ブロードウェイの存在を知ってもらうのが一番なのです。しかし、中野区内の一部の経営者たちは、中野をオタクの聖地として紹介することに複雑な思いを抱き、中野ブロードウェイを宣伝することを躊躇しています。

中野ブロードウェイの周辺には、 オタクの文化とは関係のない飲食店やショップがたくさんあります。中には、「中野ブロードウェイに行くついでに、自分の店にも来てほしい」と考えている経営者もいます。

オタクと結び付けることをためらうビジネスパーソンの気持ちはわからなくはないですが、その態度は自分たちが発信したいものばかり考えて、そこを訪れる外国人観光客の観点を尊重していません。

これがマイ・ジャパンを手放すことができないということです。

外国人観光客は、わざわざ電車に乗って遠いところに行こうとは思いません。中野に観光地としての可能性があるのは、東京都心に近く、ユニークなショッピングセンターがあることです。他にも魅力的な要素はたくさんありますが、インバウンドを誘致するにはこのふたつが最も重要なのです。

もちろん、中野に来た観光客は、公園やレストランなど中野ブロードウェイ以外の施設にも足を運ぶでしょう。そのためにも中野ブロードウェイをアピールすることが最も効果的なのです。

しかし現状では、区はこのショッピングセンターを中野のブランディングに組み込むことに消極的です。中野駅にこの地域最大の観光地を示す大きな看板がないことからも、それがよくわかります。

中野には、もっと多くの観光客が訪れる可能性があると思います。しかし、そのためにはまず、内向きな観点を、すでに観点を持っている観光客に押し付けるのを諦めることです。言い方を変えれば、自分たちがこだわっているマイ・ジャパンの観点を忘れなければ、インバウンドの数は増えないのです。

日本はクール!?――間違いだらけの日本の魅力発信
 ベンジャミン・ボアズ 著
 クロスメディア・パブリッシング

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRBはAI導入に伴う構造的な失業率上昇を相殺でき

ワールド

中国軍の汚職粛清、指揮系統・即応態勢に打撃=英国際

ワールド

トランプ氏「加齢で不安定化」、米世論調査で6割 共

ワールド

ウクライナ紛争、西側の介入で広範な対立に=ロシア大
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 5
    ペットとの「別れの時」をどう見極めるべきか...獣医…
  • 6
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 7
    揺れるシベリア...戦費の穴埋めは国民に? ロシア中…
  • 8
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 9
    武士はロマンで戦ったわけではない...命を懸けた「損…
  • 10
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中