日本の観光政策は間違いだらけ、「クールジャパン」の名称は自画自賛で逆効果だ
その一方で、地球上で最もユニークなショッピングセンターに行ってみたいと考えている観光客には、中野は最高の場所です。
中野ブロードウェイは、4つのフロアに個性的なサブカルチャーやアーティスティックな店舗が並んでいます。半世紀前には、ショッピングと住宅の複合施設でしたが、現在では「オタクの聖地」として知られており、世界でも他に類を見ない場所となっています。駅からのアクセスも良く、新宿からも中央線で1駅と大変便利な立地です。
そういった意味からも、外国人観光客に中野へ来てもらうには、中野ブロードウェイの存在を知ってもらうのが一番なのです。しかし、中野区内の一部の経営者たちは、中野をオタクの聖地として紹介することに複雑な思いを抱き、中野ブロードウェイを宣伝することを躊躇しています。
中野ブロードウェイの周辺には、 オタクの文化とは関係のない飲食店やショップがたくさんあります。中には、「中野ブロードウェイに行くついでに、自分の店にも来てほしい」と考えている経営者もいます。
オタクと結び付けることをためらうビジネスパーソンの気持ちはわからなくはないですが、その態度は自分たちが発信したいものばかり考えて、そこを訪れる外国人観光客の観点を尊重していません。
これがマイ・ジャパンを手放すことができないということです。
外国人観光客は、わざわざ電車に乗って遠いところに行こうとは思いません。中野に観光地としての可能性があるのは、東京都心に近く、ユニークなショッピングセンターがあることです。他にも魅力的な要素はたくさんありますが、インバウンドを誘致するにはこのふたつが最も重要なのです。
もちろん、中野に来た観光客は、公園やレストランなど中野ブロードウェイ以外の施設にも足を運ぶでしょう。そのためにも中野ブロードウェイをアピールすることが最も効果的なのです。
しかし現状では、区はこのショッピングセンターを中野のブランディングに組み込むことに消極的です。中野駅にこの地域最大の観光地を示す大きな看板がないことからも、それがよくわかります。
中野には、もっと多くの観光客が訪れる可能性があると思います。しかし、そのためにはまず、内向きな観点を、すでに観点を持っている観光客に押し付けるのを諦めることです。言い方を変えれば、自分たちがこだわっているマイ・ジャパンの観点を忘れなければ、インバウンドの数は増えないのです。
『日本はクール!?――間違いだらけの日本の魅力発信』
ベンジャミン・ボアズ 著
クロスメディア・パブリッシング
(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)