最新記事
シリーズ日本再発見

日本の小中学生も夢中のTikTokは、他のSNSより危ないのか?

2018年12月22日(土)11時25分
森田優介(本誌記者)

ferrantraite-iStock.

<日本ではこれまで数々のSNSが登場し、そのたびに問題も浮上してきた。いま10代の間で人気が上昇しているのは動画アプリ「TikTok」。個人情報が流出する、出会い系やいじめの温床になる――。そんな声もあるが、実際はどうなのか>



※12月25日号(12月18日発売)は「中国発グローバルアプリ TikTokの衝撃」特集。あなたの知らない急成長動画SNS「TikTok(ティックトック)」の仕組み・経済圏・危険性。なぜ中国から世界に広がったのか。なぜ10代・20代はハマるのか。中国、日本、タイ、アメリカでの取材から、その「衝撃」を解き明かす――。
(この記事は本誌「TikTokの衝撃」特集の1記事の拡大版です)

内閣府によれば、日本の小学生のスマートフォン所有率は27%。中学生になると半数以上がスマホを持っている。当然、SNSが絡むトラブルは頻発する。

「少し前まではLINEが多かったが、今はTikTokを挙げる教師が多い」と、静岡大学の塩田真吾准教授は言う。「この半年で急増した」

2016年9月に中国でサービスを開始し、世界中でユーザー数を爆発的に伸ばしてきたショートムービーアプリのTikTok(ティックトック)だが、人気の高まりとともに問題視する声も強まっている。2017年10月にローンチされた日本でも例外ではない。

どの国でも共通しているが、最も懸念されているのは子供がトラブルに巻き込まれることだ。他の主要SNSに比べ、10代のユーザーが圧倒的に多い。

インターネットの利用に際して身に付けるべき「情報モラル」の教育を専門とする塩田によれば、TikTokが絡む子供の問題は5つに分類できる。

1つは使い過ぎてしまう「依存」の問題。2つ目は著作権に違反した動画を投稿してしまう問題だが、これは運営会社のバイトダンスが音楽会社と包括契約を結んでおり、ユーチューブなどと比べると可能性はさほど高くない。そして3つ目は、動画をアップすることで自らの個人情報を公表してしまうことだ。

これはTikTok固有の問題ではないが、動画が15秒と短く簡単で、周囲にも投稿している人が多いため投稿の心理的なハードルが低いこと、撮影した場所や着ている制服から個人情報を特定されやすいことを、多くの専門家が指摘している。

「ただし、個人情報の問題は重要ではあるが、薄れてきていると考えている」と、塩田は言う。SNSに顔を出すことは大人にとっても珍しくなくなりつつあるからだ。それもあって「顔を出すと危ないよ、ストーカーに遭うよと言っても、子供たちには響かない」。

残る2つの問題は、コメント欄とメッセージ機能に関わるものだ。

顔出し投稿だから「悪い大人が狙う可能性が高い」

ツイッターなどでもよく指摘される問題だが、子供が性被害に遭うきっかけとなる危険性がある。しかも他のSNSと違い、ほとんどのユーザーが顔を出して投稿しているのがTikTokだ。

「自由にやり取りできる環境が放置されていて、完全に顔が出ていて少女であることも分かるので、悪い大人が狙う可能性が高い」と、ITジャーナリストの高橋暁子は警鐘を鳴らす。

利用規約に「13歳以上」とあるものの、TikTokには現に小学生のユーザーが多く見られる。高橋によれば、日本でのフォロワー数1位である野々山ひなたちゃん(12歳)に憧れ、同じようにTikTokで有名になってテレビに出たいと考える「小学生女児が一気に増えた」のだという。

そしてその中には、「明らかに親が見ていないだろうという投稿もある。部屋の隅で撮っていたり、子供らしい文章で(コメント欄に)書いていたり、直接やり取りをしている」。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

独ZEW景気期待指数、12月は45.8に上昇 予想

ワールド

ウクライナ提案のクリスマス停戦、和平合意成立次第=

ビジネス

EUの炭素国境調整措置、自動車部品や冷蔵庫などに拡

ビジネス

EU、自動車業界の圧力でエンジン車禁止を緩和へ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中