最新記事
シリーズ日本再発見

日本経済のカギを握るのは、外国の資産30億円「超富裕層」たち!?

2018年07月02日(月)16時45分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

SeanPavonePhoto-iStock.

<日本にいま必要なのは、ただ訪日観光客を増やすことでも、日本人の高所得者を増やすことでもない。世界人口の1%未満に過ぎない「超富裕層」の取り込みこそが必要だ。だが、今のままでは彼らは日本にやって来ない>

日本政府観光局(JNTO)の発表によると、今年5月の訪日外国人数(推計値)は267万5000人。前年同月比16.6%増で、5月としての過去最高を記録した。中国(29.3%増)や韓国(14.6%増)のほか、ヨーロッパ各国やアメリカ、オーストラリアからの訪問者数も前年比2ケタ増を記録するという好調ぶりだった。

政府は2030年に訪日外国人観光客を6000万人とすることを目標に掲げ、近年、さまざまな取り組みを進めてきた。人口減少・少子高齢化に直面する中、観光産業には経済の牽引役として大きな期待が掛かっているからだ。その数字は着実に伸びてきており、成果が出ているように見える。

しかし、このままでは「観光先進国」になれないと警鐘を鳴らす声もある。一体、何が問題なのか。

『世界から大富豪が訪れる国へ 日本の極みプロジェクト』(秋元司・著、CCCメディアハウス)によれば、観光が日本経済の動力となり、持続的な経済成長へとつながっていくために必要不可欠なのは、「超富裕層」の取り込みだ。

訪日客は増えたが、日本での消費額は減っている

この本は、国土交通副大臣を務める衆議院議員の秋元司氏を代表に、国土交通省の若手官僚たちが集まった「KIWAMIプロジェクト研究会」が取りまとめた内容がベースになっている。

「KIWAMI」には、あらゆるものの「極み」を尽くした場を作るという意味のほかに、世界の人々が日本に「来て(KI)」「ワクワクして(WA)」「満たされる(MI)」ことを目指す、という思いが込められているそうだ。

ここで提唱されているのが、世界の大富豪、エグゼクティブ、超富裕層......などと呼ばれる人々をもっと日本に呼び込むこと。なぜ超富裕層なのだろうか。それは、観光客の人数だけを伸ばしても、必ずしも日本経済にプラスになるわけではないからだ。

実際、訪日外国人の数だけを見れば、2012年以降、順調に右肩上がりを続けている。2017年は2869万人で、前年から約20%増、2011年と比べると約5倍になった。訪日客による消費額も2017年には4兆4162億円と4兆円を超え、2011年から5倍以上の増加となっている。

しかしながら、訪日客1人当たりで見ると、その額は減っている。「爆買い」が流行語になった2015年の17万6000円をピークに、2016年は15万6000円、2017年は15万4000円。日本を訪れる人の数は増えているのに、ひとりひとりが落としていくお金は減っているのだ。

人口減少と少子高齢化が進む日本にとって、「観光先進国」の実現は国力を高めるための重要な課題だ。さらには観光客のみならず、優れた人材や企業、豊富な資金を海外から呼び込んでいかなければならない。そのためにはまず、日本を訪れる人にもっとお金を使ってもらうこと。だからこそ、世界の超富裕層をターゲットに据えた取り組みが重要になってくると本書は提言している。


『世界から大富豪が訪れる国へ  日本の極みプロジェクト』
 秋元 司 著
 CCCメディアハウス

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中