世界に広がる「うま味」、でも外国人に説明できますか?
アジア2位レストラン「傳」店主が語る、「うま味」普及のカギ
2018年の「アジアのベストレストラン50」で日本国内最高位の2位を獲得した日本料理店「傳」。
海外からの注目度は高まり、アジアをはじめ、ヨーロッパやアメリカ等、ディナーの8〜9割が外国人客の予約という日も少なくない。いま海外に影響力のある料理人の1人、店主の長谷川在佑さんに「umami」を提供する最前線の立場として、外国人客の反応やそのスタンスを聞いた。
「私と交流のある海外のシェフたちは、"umami"について理解してきていると思います。ただ広い視野で見れば、和食と言われても、ラーメン、お寿司、天ぷら......と答えるお客様がまだまだいるように、"umami"についても言葉は聞いたことはあるけど、それが何かはわからない。一般的には、日本人の私たちが考えているほど、広がっていないように感じます」
傳のだし汁は、かつお節がベースで、昆布を使わない。長谷川さんが関東出身という理由もあるが、かつお節のだし汁に、夏ならとうもろこし、冬ならかぶ、といった季節ごとの野菜を組み合わせた、だし汁を使っているという。
「昆布は外国人に馴染みがなかったりもするので、かつお節の香りの華やかさや、口に含んだときのシャープさを活かしながら、季節の野菜とともに、だし初心者の外国人のお客様にもわかりやすいように仕上げています。」
その根底には、自分の国にある食材や調味料は親しみやすいので、だし汁だけよりも、それらと組み合わせたほうが、おいしさや「うま味」を感じやすいはずという長谷川さんの考えがある。
「大切なことは、知識やルールというより、どのように楽しんでもらえるのか、だと考えています」
謙虚な姿勢で長谷川さんは丁寧に話してくれたが、「うま味」は、そして和食はかくあるべしといった、一方的な伝え方はそこにはない。一般の人たちにも親しんでもらうには、その国ごとに存在する「うま味」を日本的な仕立てで楽しみながら感じてもらえる機会やきっかけづくりこそ大切だと考えているようだ。
「うま味」は世界中にあるもの。かつお節は魚のだしであり、野菜のだしも世界各国に共通のものがたくさんもある。トマトやチーズは「うま味」の塊であり、例えばイタリア人にとっては小さい頃から親しむ日常的な料理の中に「umami」は凝縮している。
普及のポイントは、やはり相手の立場に寄り添うことなのだろう。
実は「umami」という言葉が広まるだけではなく、実際に「うま味」を広く楽しんでもらうためのヒントは、和食という文化の原点に隠されているのかもしれない。おもてなしの心によって、相手の立場を想像しながら楽しませていく――それが和食の伝統的な魅力でもあるからだ。
そんな心づかいが、今こそ求められているのではないだろうか。
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