「復活」ソニーが作ったロボットおもちゃ「toio」とは何か
「放課後活動」から正式な研究対象へ
どうやら、市場調査を基に商品開発を行う、マーケティング用語でいうところの「マーケットイン」ではなかったようだ。
しかし、5年前の時点ではその言葉通り、「単なる放課後活動に過ぎなかった」とか。その後、CSLで研究対象として正式に認められたことがプロジェクトを大きく推進させた。
アレクシーさんは、2013年にCSLが開催したシンポジウム「Sony CSL Open House 2013」で、レゴブロックにモーターなどを搭載し操作ができるという、toioのベースとなる機器を初公開。ソニーが持つ電池などの技術を活用し、現実の世界とゲームの世界をつなぐことを可能にするアイデアは、この時すでに形になっていた。
ところが、この研究が商品として世に出るにはさらなるハードルがあった。本体の位置をリアルタイムで把握するために、天井にカメラを仕掛けなければならなかったのだ。天井にカメラを設置するという制約があっては、家庭で遊べる商品として世に送り出すことは難しい。
その課題を解決したのが、3人目の開発者、ソニーの中山哲法さんだ。カメラのソフトウエアエンジニアである中山さんは、特殊なマットと組み合わせた「絶対位置センサー」を搭載することで、カメラで撮影しなくても本体の位置をリアルタイムで把握というアイデアを実現した。
その後、社内で年4回開催される新規事業創出オーディションで見事優勝し、事業化への道が開いたという。商品化に向けたプロジェクトが正式にスタートしたのは、2016年6月のことだった。
「特殊なマットに小さな目印が印刷されていて、光学的な技術を使ってコア キューブがXY座標を読み取っています。そうすることで、2つのコア キューブがマット上のどこにいるかを、常に把握できるようになりました。つまり、コンソールに内蔵したコンピューターからの指示を受けて、常に正確な動きを実行することが可能です。この仕組みによって、コア キューブにかぶせた『目玉生物』という工作生物が、もう1つのコア キューブを追いかけ回しているように見えるんです」
「ゲズンロイド」と「トイオ・コレクション」
目玉生物とは、toioのソフト「工作生物 ゲズンロイド」に含まれる、15の工作生物の1つだ(記事冒頭の写真)。ピンポン玉大の白い球に目玉を描いた目玉生物ユニットをコア キューブにかぶせてマット上で使用すれば、まるでもう1つのコア キューブを目で見て追いかけているような動きをする。
toioはカートリッジを差し替えることで、同じコア キューブを使ってさまざまな遊びを楽しめる。現在は「工作生物 ゲズンロイド」と「トイオ・コレクション」の2タイトルあり、今後、続々とタイトルを増やしていく予定だ。
「工作生物 ゲズンロイド」は、簡単な紙工作でコア キューブをカスタマイズすることで、コア キューブがまるで生きているようなリアルさで動き出すソフト(クリエイティブグループ「ユーフラテス」が監修)。絵本の中にプリントされている動きのプログラムコードをコア キューブに読み込ませることで、紙工作と共にコア キューブが目玉生物になったり、しゃくとり虫になったり、2足歩行ロボットになったりもする。
この生き物のような見え方の実現にも、リアルタイムかつ高精度な絶対位置センサーが大きく貢献している。