最新記事
シリーズ日本再発見

夏に初詣も!? 御朱印ブームだけじゃない神社界の新潮流

2017年07月06日(木)11時50分
石﨑貴比古(神主ライター)

日本各地に広がる寺子屋の神社版

神社界の中には「神道は宗教ではない」という考え方がある。神道は日本が古来奉じて来た伝統的な考え方なのであり、他の宗教とは一線を画す存在だというのが主旨である。

その是非はともかく、いわゆる「カミサマを信じなさい」的な形ではなく、日本人の生活に根ざした伝統行事を再発見・再評価することで神社への関心を高めようという取り組みも始まっており、ここで紹介しておきたい。

そのような潮流の中で最も注目すべき存在は、三社祭で有名な東京・浅草の浅草神社。同社は祭礼を大改革する一方、「社子屋(やしろこや)」と「夏詣(なつもうで)」という新たな取り組みで脚光を浴びている。その仕掛け人でもある禰宜の矢野幸士さんはこう語る。

「平成24年(2012年)から始めた社子屋はいわば寺子屋の神社版。当初は数名の参加が目標でしたが、今では常に50~60名が来られます」

そのプログラムは実に多岐にわたり、古事記の朗読や神棚の祀り方といった神道に関する勉強もあれば、茶道、投扇興(とうせんきょう)や勾玉(まがたま)製作といった体験もの、僧侶を招いた座禅講座まである。

japan170706-4.jpg

浅草神社で行われる「社子屋」の様子(写真提供:浅草神社)

「神社を定期的に人が寄り合うコミュニティの場にすると共に、我が国や浅草の伝統文化を浅くとも広く継承する場にしたいと考えました。参加者の世代間交流を図る事もひとつの目的としています」

この取り組みは東京都目黒区の上目黒氷川神社では「社子屋」、大阪府藤井寺市の道明寺天満宮では「宮子屋(みやこや)」、北海道帯広市の帯広神社では「杜小舎(もりこや)」と、時に名前を変えて波及している。

新しい風習=「夏版の初詣」を作る

一方の「夏詣」はさらに革新的な取り組みだ。

「初詣、祭礼など日本人の多くが神社と関わる機会は年に2~3回ですが、そこにもう1回を加えることを大きな目的としました。年末年始には、12月31日の年越の大祓で心身を清め、新年を迎えて初詣でお参りします。同じように、6月30日の夏越の大祓で半年の罪穢れを祓いますので、その翌日、残り半年の始まりの日も神社・仏閣をお詣りお参りする機会を作ります。いわば夏版の初詣です」

つまり「新しい日本の風習」を作ってしまおう、というのである。

「夏の時期、当社は閑散期を迎えます。この時期にも参拝者を増やせないかと思案していて、当初は境内で流しそうめん大会を企画していました。その中で、日本や浅草の夏の風習や習慣を掘り起こしていくと、今に伝えていかなければならないことが多くあり、それらを踏まえた取り組みの必要性を感じたのです。併せて、7月1日は富士山を始めとする山岳信仰の山開きの日でもあり、また7日後は同じく古くから親しまれている七夕です。この期間に神社・仏閣に詣でることの大切さを伝えていきたいと考えました」

初めての実施は2014年の夏。以来、多くの協賛者や協力団体を加え、浅草神社の他にも「夏詣」を実施する社寺が50を超えた。

内容はいわゆる夏の縁日的な出店に加え、各種ライブコンサートやうなぎ奉納祭、玉砂利の参道をライトアップした天の川プロジェクトなど「夏」をキーワードにした伝統文化を現代的に解釈した催しで目白押しだ。矢野さんはこう続ける。

「神社は、地域のコミュニティの場です。昔は地域の祭礼のために人が集い、情報を交換し共有しました。だからこそ"社会"は"社で会う"という意味も含んでいるのではないでしょうか。神社がそうした機能を持つためには、より多くの人が集う仕組みを地域と連携して作り上げることが肝要だと思います」

神社の新潮流はまだまだ始まったばかりである。

【参考記事】夏場は6時間待ちも! 日本で今「かき氷」がブームの理由

japan_banner500-season2.jpg

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

インタビュー:日中関係悪化の長期化懸念、衆院選「風

ワールド

イスラエル、米国のイラン介入に備え厳戒態勢=関係筋

ワールド

北朝鮮の金与正氏、ドローン飛来で韓国に調査要求

ワールド

米ミネアポリスで数万人デモ、移民当局職員による女性
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画をネット民冷笑...「本当に痛々しい」
  • 4
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 9
    飛行機内で「マナー最悪」の乗客を撮影...SNS投稿が…
  • 10
    決死の嘘が救ったクリムトの肖像画 ──ナチスの迫害を…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 6
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 7
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 8
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 9
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 10
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中