最新記事
シリーズ日本再発見

新宿―東京は何線で? 日本の交通案内は分かりやすいですか

2016年12月09日(金)14時39分
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)

 日本の路線図の高評価ぶりがわかるエピソードがある。中国・東南大学建築学院の研究者、陶岸君さんは日本や欧州を旅行した際に美しく見やすい路線図があることに感銘を受け、その手法を応用した「中国高速鉄道路線図」を発表した。中国は鉄道建設の技術だけでなく、路線図を含めたサービス全般のレベルを上げなければならないというのが陶さんの主張だ。2014年1月から公開し更新を続けている(日本語版も作成・公開されている)が、見やすく美しいと中国のネットで爆発的な人気を呼んでいる。

アプリは便利だが、不便だったり多すぎて選べなかったり

 それでも思わぬ落とし穴もあるようだ。新宿駅の切符売り場で話を聞いた李海さん(中国出身、50代女性)は、駅の路線図や街頭地図は字が小さくて読みづらいとこぼした。李さんの娘で、一緒に旅行している孫慧雪さん(中国出身、30代女性)は、「どうせスマホのアプリで調べるんだから字の大きさなんてどうでもいいじゃない」と一言。日本旅行の前にトラベラーズSIMを購入してスマホを使っているため、交通情報のチェックにはさほど苦労していないという。

「日本の友だちに使いやすい乗り換え案内アプリを教えてもらったんですが、中国語に対応していないんです。地名はだいたい漢字表記なので理解できますが、入力が難しくて。中国の簡体字に対応してくれたらもっと便利なのに」とこぼしていた。その後、中国語に対応しているアプリを見つけて事なきを得たという。

 スマートフォンの普及によって旅は大きく変わった。例えば、Android OS用アプリストア「Google Play」で「Japan Travel」と検索すると無数のアプリが表示される。交通案内、トラベルガイド、無線LAN接続支援などさまざまだが、あまりに数が多すぎてどれを使えばいいのかよく分からないと孫さんは言う。「百度地図とか私たちが普段から使っているアプリにもっと日本の情報があればうれしいんですが」

 日本国内では官民一体となった五輪対策が続いているが、海外企業との連携がひとつの課題と言えそうだ。

路線図や案内板の「神翻訳」、どう思う?

 外国語表記という意味ではたびたび話題となるのが「神翻訳」だ。中国で"笑える誤訳"のことをこう呼ぶ。便利な翻訳アプリが普及したのはいいが、ときおりとんでもない誤訳が登場するのだ。例えば、あるホテルでは中国語メニューを作ろうと知識ゼロの従業員が翻訳ソフトを頼みに奮闘した結果、「ウナギの蒲焼き(ミッドフィルダー)」という謎のお品書きが登場した。半身という意味の「ハーフ」を翻訳ソフトにかけたら、サッカー用語として誤訳してしまったというわけだ。路線図や駅の案内板でもそうした「神翻訳」は少なくない。

japan161209-2.jpg

提供:筆者

「ひどい翻訳を見つけました」と写真(上)を送ってくれたのは筆者の友人。大阪駅の電光掲示板を撮影したものだ。「手荷物預かり所は受付停止、コインロッカーの空きスペースも少なくなっています」というメッセージが、英語と中国語では「手荷物預かり所もコインロッカーもいっぱいです」と誤訳されている。「少ない」と「ない」とでは大違い。「外国人差別と言われても仕方ないですよね」と友人は嘆いた。

【参考記事】外国人客とのコミュニケーションに困っても、このサービスがあれば大丈夫

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

台湾最大野党主席、中国版インスタの禁止措置は検閲と

ビジネス

ドイツ景気回復、来年も抑制 国際貿易が低迷=IW研

ワールド

台湾、中国の軍事活動に懸念表明 ロイター報道受け

ビジネス

市場動向を注視、為替市場で一方向また急激な動きもみ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 7
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 8
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 9
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 10
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中