新宿―東京は何線で? 日本の交通案内は分かりやすいですか
日本の路線図の高評価ぶりがわかるエピソードがある。中国・東南大学建築学院の研究者、陶岸君さんは日本や欧州を旅行した際に美しく見やすい路線図があることに感銘を受け、その手法を応用した「中国高速鉄道路線図」を発表した。中国は鉄道建設の技術だけでなく、路線図を含めたサービス全般のレベルを上げなければならないというのが陶さんの主張だ。2014年1月から公開し更新を続けている(日本語版も作成・公開されている)が、見やすく美しいと中国のネットで爆発的な人気を呼んでいる。
アプリは便利だが、不便だったり多すぎて選べなかったり
それでも思わぬ落とし穴もあるようだ。新宿駅の切符売り場で話を聞いた李海さん(中国出身、50代女性)は、駅の路線図や街頭地図は字が小さくて読みづらいとこぼした。李さんの娘で、一緒に旅行している孫慧雪さん(中国出身、30代女性)は、「どうせスマホのアプリで調べるんだから字の大きさなんてどうでもいいじゃない」と一言。日本旅行の前にトラベラーズSIMを購入してスマホを使っているため、交通情報のチェックにはさほど苦労していないという。
「日本の友だちに使いやすい乗り換え案内アプリを教えてもらったんですが、中国語に対応していないんです。地名はだいたい漢字表記なので理解できますが、入力が難しくて。中国の簡体字に対応してくれたらもっと便利なのに」とこぼしていた。その後、中国語に対応しているアプリを見つけて事なきを得たという。
スマートフォンの普及によって旅は大きく変わった。例えば、Android OS用アプリストア「Google Play」で「Japan Travel」と検索すると無数のアプリが表示される。交通案内、トラベルガイド、無線LAN接続支援などさまざまだが、あまりに数が多すぎてどれを使えばいいのかよく分からないと孫さんは言う。「百度地図とか私たちが普段から使っているアプリにもっと日本の情報があればうれしいんですが」
日本国内では官民一体となった五輪対策が続いているが、海外企業との連携がひとつの課題と言えそうだ。
路線図や案内板の「神翻訳」、どう思う?
外国語表記という意味ではたびたび話題となるのが「神翻訳」だ。中国で"笑える誤訳"のことをこう呼ぶ。便利な翻訳アプリが普及したのはいいが、ときおりとんでもない誤訳が登場するのだ。例えば、あるホテルでは中国語メニューを作ろうと知識ゼロの従業員が翻訳ソフトを頼みに奮闘した結果、「ウナギの蒲焼き(ミッドフィルダー)」という謎のお品書きが登場した。半身という意味の「ハーフ」を翻訳ソフトにかけたら、サッカー用語として誤訳してしまったというわけだ。路線図や駅の案内板でもそうした「神翻訳」は少なくない。
「ひどい翻訳を見つけました」と写真(上)を送ってくれたのは筆者の友人。大阪駅の電光掲示板を撮影したものだ。「手荷物預かり所は受付停止、コインロッカーの空きスペースも少なくなっています」というメッセージが、英語と中国語では「手荷物預かり所もコインロッカーもいっぱいです」と誤訳されている。「少ない」と「ない」とでは大違い。「外国人差別と言われても仕方ないですよね」と友人は嘆いた。