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ニューズウィーク日本版編集部 From the Newsroom
「アメリカ訛り」BP新社長を喜ぶ人
米原油流出をめぐる相次ぐ失言・失態でアメリカ国民を激怒させた英石油大手BPのトニー・ヘイワードCEO(最高経営責任者)が、ようやく辞めることになった(あと2カ月も居座るが)。後任には米国部門トップのロバート・ダドリーが就く。
イギリス人のヘイワードと違って、ダドリーはアメリカ人。BP史上初のアメリカ人CEOになる。しかも彼は流出現場に近いメキシコ湾岸のミシシッピ州で育った。今や「アメリカ社会最大の敵」とまで言われるBPの信用を取り戻すには、やはり地元の人間でなくちゃ、ということだろう。
ヘイワードの場合、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」ということか、彼が話すイギリス英語もアメリカでは嫌われていた。国籍だけでなく言葉も「純アメリカン」なCEOになれば、アメリカ人を安心させる効果は確かにあるだろう。
「ダドリーがCEOに最適の候補である理由は2つある。彼がトニー・ヘイワードでないことと、アメリカなまりで話すことだ」と、あるエネルギー業界アナリストがAP通信に語っている。
原油流出はひとまず止まったが、BPの前途は多難だ。でもアメリカ人のダドリーが失敗しても、もう「イギリス企業」のせいにされることはないだろう。BPは実は多国籍企業で半分アメリカ化しているのに、イギリス企業として批判する声がアメリカでは強いが、それも変わるはずだ。
キャメロン英首相はアメリカ人のBPたたきをひどく心配していた。イギリス人の年金の多くはBP株で運用されており、株価が下がれば年金が減るという切実なお国の事情もある。今回のCEO人事を一番喜んでいるのは、案外キャメロンかもしれない。
──編集部・山際博士
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