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コラム
ニューズウィーク日本版編集部 From the Newsroom
『カールじいさん』 少年の意外なモデル
アニメーション作品では、初のカンヌ映画祭オープニングを飾り、今年のアカデミー長編アニメ賞を受賞した「カールじいさんの空飛ぶ家」。
主人公カールじいさんと冒険を共にする少年、ラッセルのキャラクター設定には、ある韓国人の幼少期が深く関わっている。 ピクサーの ストーリーボード・アーティスト、ピーター・ソン(31)の話だ。
ラッセルがアジア系として描かれているのも、彼の影響だろう。写真を見るとよく分かるが、ぽっちゃりした童顔で、外見もよく似ている(笑)
ソンはニューズウィーク韓国版で、こう語っている。「制作初期の段階では、ラッセルのキャラクターはちょっと違っていた。ある日、ピート・ドクター監督が僕に、どんな幼少期だったか、育った街はどんな雰囲気だったかを、根掘り葉掘り聞いてきた。映画の中に自分の幼少期が活かされるなんて、制作期間中、ずっと興奮していた」
ニューヨークで生まれ育ったソンがアニメーションと関わるようになったのは、母親の影響が強い。
同誌によると、1970年代に、アメリカへ移住したソンの父親は、青果店を営み、母親は看護師として、昼夜なく働いていた。両親が仕事でいない間、ソンは、弟と絵を描いて退屈を凌いでいたという。そんな母親は、映画狂で、毎週金曜になると、息子2人を連れて映画館へ通った。上映中、分からない言葉が出てくると、幼いソンに意味を聞いていた母親が、ディズニー映画だけは静かに見ていたという。この時ソンは、アニメーションは 老若男女人種を問わず、誰にでも簡単に理解できるジャンルだということを悟った。そして、彼にとって絵を描く事は、ただの退屈凌ぎではなく、夢となり、現実となったのだ。
「ファインディング・ニモ」、「インクレディブル」、「WALL・E/ウォーリー」など様々な作品を経て、「レミーのおいしいレストラン」では、声優にも挑戦(レミーの兄:エミールの声を担当)。
そして昨年、とうとう監督デビューを果たした。「カールじいさん〜」の劇場上映前に流れた短編アニメーション「晴れ、ときどきくもり」(原題:Party Cloudy)が、そうである。
彼の冒険もまた始まったばかりだ。
──編集部・川崎寿子
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