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ニューズウィーク日本版編集部 From the Newsroom
ブラウンはブレアにはめられた?
3月5日、ゴードン・ブラウン英首相が03年のイラク戦争への参戦決定のプロセスを検証する独立調査委員会の公聴会で証言した。この公聴会にはトニー・ブレア前首相も1月29日に出席し、参戦を「後悔していない」と自信たっぷりに語っていた。
ブラウンも、ブレア政権時代のナンバー2として責任が追及されたうえ、戦死者の遺族からは財務相として「十分な資金を提供しなかったために、兵士を危険にさらした」との批判にさらされている。
ブラウンは公聴会で自身の決定の正当性を主張したが、6月までに行われる総選挙への影響は避けられないだろう。一時期ほどではないにしろ、現時点では野党・保守党に支持率でリードされている状況は変わっていない。そもそもブラウンの証言は総選挙後に行われる予定だったが、委員会の予定変更によってこの日の登場となった。
そんなピンチのブラウンを尻目に前日の3月4日、ブレアが自身の政治生活を綴った『The Journey』を9月に出版することが発表された。契約金は数百万ポンドにもなると言われる、ベストセラー間違いなしの回顧録だ。
この回顧録、07年にはすでに出版が決定していたが、すでにそのときから今年の総選挙が終わるまでは発売されないだろうと見られていた。その理由の1つは、この回顧録では長年イギリスでは噂され続けてきたブレアとブラウンの「政権禅譲密約」について語られると見られていたことだ。
野党時代のブレアとブラウンはどちらも83年に初当選した「同期」ということもあって、一時は事務所を共有するほどの盟友だったという。そんな2人が94年に当時の労働党党首ジョン・スミスの急死を受けて結んだとされるのが、噂される密約だ。当時は次期党首の最有力候補だったブラウンが党首選に出馬せず、ブレア支持に回るのと引き換えに、ブレアが政権を取れば2期目にはブラウンにその座を譲るというものだった。
結局、この密約はブレアが2期目の途中で政権を譲らずにブラウンの不満を招き(07年には辞任してブラウンが跡を継いだが)、2人の間に確執を生むことになったと言われている。そのあたりの事情が、ブレアの回顧録でどう語られるのかは分からないが、実際にブレアはかつてブラウンと確執があったことを認めている。ブラウンも今年2月のテレビ番組で、密約の存在を認めた。
10年にもわたって首相を務め、引退後も講演会に回顧録出版にとボロ儲けのブレアと、なんだか貧乏くじを引かされたような形のブラウン。さすがに密約を結んだ時点でブレアがこんな未来を予想していたわけではないだろうが、2人を見ているとうまく世の中の流れを自分の下に引き寄せられるかどうかも政治家の力量なのだと思わずにいられない。
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