「ウクライナ追加支援6000億円」を擁護する論理(人道や国際正義をぬきに)
とはいえ、ロシアがクリミア半島を編入した2014年(約4億ドル)やコロナ感染拡大の2020年(マイナス3600万ドル)と比べて、その減少幅は限定的ともいえる。
それだけ海外からの投資は根強いわけだが、具体例をあげるとアメリカの金融大手シカゴ・アトランティックは約2億5000万ドルを投資してウクライナでの住宅建設などに参入する方針である。
アメリカだけでなくEU、さらにロシア制裁と距離を置く中国、インド、アラブ首長国連邦(UAE)でも同様の動きはみられる。
ウクライナに食い込める手段の限界
インフレで世界的に消費が落ち込むなか、財・サービスの需要が急激に高まるのは戦地以外に少ない。だからこそウクライナは「ヨーロッパ最後の大チャンス」とも形容される。
多くの企業が関心を持つのは軍事産業やインフラ復旧だけではない。
ウクライナの投資ガイドによると、この国には世界3位のトウモロコシ輸出をはじめとする農業、世界2位のシリコマンガン輸出などの鉱物資源、EU圏や中東産油国などに近い立地条件、情報エンジニアを含む人的資源など、いくつかの好条件がある。
こうした注目セクターはNASDAQでも紹介されている。
ただし、民間投資がスムーズに進むかは、日本とウクライナの政府同士の関係によっても左右される。
一般的にインフラ建設や資源開発など相手国に許認可権があるものについては、進出しようとする企業の本国政府によるバックアップが欠かせない。
通常の場合でさえそうなのだが、戦時下という特殊な状況のウクライナならなおさらだ。例えば、企業の安全への配慮ひとつとっても政府間の連携と情報共有は欠かせない。
ところが、この点において日本の優位性は少ない。ウクライナ侵攻以前からのつき合いは薄いし、昨年2月からも欧米のように軍事援助しているわけではない。
だとすれば、人道支援といった民生支援で存在感を出さなければ、その先の民間投資でも成果を期待しにくい。つまり、人道や国際正義はさておき、「日本の利益」という観点からみて追加支援には必然性を見出せる。
日本政府は来年2月、東京でウクライナ経済復興推進会議を開催するが、ここではインフラ建設や農業などビジネス分野も議論になる。
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