W杯開催地カタールへの「人権侵害」批判はどこまで正当か
アフガニスタンのタリバンが女性にヒジャブの着用を強制したとき、欧米メディアはこぞってこれを批判した。
しかし、嫌がる人にヒジャブを強制するのが人権侵害であるなら、被りたい人にヒジャブ着用を禁じるのも人権侵害であるはずだ。
欧米は確かに人権保護に熱心だが、それが熱心であるだけに、かえって他者への批判には「自分のことを棚にあげる」傾向が浮き彫りになりやすい。サッカーははからずも、その象徴になったといえる。
イスラモフォビアの変種か
最後に、アルコール規制の問題について触れておこう。
ヨーロッパではサッカーなど運動競技を観戦しながらの飲酒が定番だが、これは「パンとサーカス」を求める市民が、コロッセウムで剣闘士の戦いに興じていた古代ローマ帝国にルーツを持つ習慣だ。それはアメリカや日本の野球場でビール販売が盛んなことにもつながっている。
だから、世界の飲料メーカーのスポンサー契約のうちサッカー関連は49%を占めるという報告もある。アルコールを扱う飲料メーカーにしてみれば、W杯は大きなビジネスチャンスかもしれない。
しかし、戒律で飲酒が禁じられているイスラーム圏でW杯を行なう以上、アルコール販売が規制されることはいわば当然で、そこに欧米の習慣を持ち込もうとすること自体、文化侵略にすらあたる。
むしろ、ヨーロッパのスタジアムでフーリガンが暴れる一因に飲酒が指摘されていることを考えれば、「スポーツ観戦に飲酒はつきもので、それを規制するのはおかしい」という発想の正当性も疑わしい。
要するにアルコール販売の規制にまで踏み込んだ批判は、他者を認めない、野蛮なものでさえあり、カタール大会招致の不透明性に関する批判すら「イスラーム圏だから批判されるのでは」と思わせかねない。
それは第三者に、カタール大会批判が欧米に根強いイスラーム嫌悪(イスラモフォビア)の変種に過ぎないという印象をも与えかねないのである。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
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