ウクライナのドローン戦争の「異常性」──中国製軍用ドローンが見られない理由
しかし、ドローンによる攻撃は標的の確認が不正解になりやすく、民間人に対する「誤爆」も多い。そのため、そもそも軍用ドローンを用いること自体、戦時国際法を定めたジュネーブ条約に違反するという指摘もある。
それでも法的な議論はほとんど進まないまま実態だけが先行し、とりわけこの数年でドローン戦争が激しくなってきた。
コスパ重視の戦争へ
どの国も、自軍兵士の犠牲を減らしながら戦果をあげたい。ドローンの利用はいわば「コスパ重視の戦争」を目指す気運の象徴といえる。
さらに、技術の普及にともない、軍用ドローンを生産・輸出できる国が増えたことが、ドローン戦争に拍車をかけてきた。
その結果、例えばイエメンの反体制派フーシは2019年、イエメン政府を支援する隣国サウジアラビアの最大の石油企業サウジアラムコの施設をドローンの自爆攻撃で破壊し、これによってサウジアラビアの石油生産量は一時半減した。同様の攻撃は、今年3月にも発生している。
また、(日本でほとんど報じられない)エチオピア内戦では、政府軍がトルコ製バイラクタルTV2、中国製翼竜II、イラン製モジュール6などを用いているといわれる。
なかでも数多くのドローンが飛び交うのが、「ドローン戦争のグラウンド・ゼロ」とも呼ばれたリビアで、敵対する二つの勢力がそれぞれトルコ、中国からドローンを調達してきた。その結果、ニューアメリカ財団の調査によると、2018年6月からの20カ月だけで1863回の攻撃が確認され、333-467人の民間人が犠牲になった。
リビアでは人工知能(AI)を搭載した自律型殺傷兵器(LAWS)、いわゆるキラーロボットも登場した。
国連は2020年3月の戦闘で、リビア政府軍がトルコ製LAWSを用いたと報告している。リビアで使用されたのは、トルコの兵器メーカー、STM社が開発したLAWSとみられているが、トルコ軍は同年6月にKargu-2の導入を発表した。
つまり、トルコ軍の正式採用より先にKathy-2はリビアで使用されたのであり、だとするとリビアは最新式LAWSの実験場になったといえる。
ウクライナの特殊性
こうした世界の潮流をみれば、ウクライナの戦場でドローンが多用されること自体は不思議ではない。
このうち、ロシア軍はロシア製オルラン10の他、イラン製シャヘド136を投入しているといわれる(イラン政府はロシアへの武器輸出を否定している)。
これに対して、ウクライナ側はバイラクタルTV2などのトルコ製だけでなく、アメリカ製スウィッチブレードなどを用いている。
ただし、軍用ドローンは有人航空機に比べれば安価で、トルコ製など新興国製になればさらに先進国製より安いが、それでもバイラクタルTV2の場合1機200万ドルほどする。そのため、ウクライナ、ロシアの双方とも、軍用より安価な中国製Mavic-3(1機2000ドル程度)など民生ドローンを用いているといわれる。
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