しかし、ウクライナ政府はこれを見て見ぬふりをすることがほとんどだった。ロシアの脅威に対抗するためにはアゾフ連隊や民兵の力が欠かせなかったからだ。ウクライナ政府に対する極右の影響力はアメリカなども認めている。実際、欧米はアゾフ連隊を「国際的ヘイトグループ」と位置づけながらも、これに訓練などの援助を提供してきた。

市民の犠牲は減るのか

とはいえ、である。

たとえウクライナ政府が極右に乗っ取られているとしても、それを理由にロシアが打倒していいかは話が別だ。

第一、白人極右を利用してきたのはウクライナだけでなくロシアも同様だ。2014年以来、ウクライナ東部ドンバス地方の分離独立を画策してきた勢力には、ロシアから流入した人種差別的な極右が数多く含まれている。その意味で、ウクライナ政府がネオナチならロシア政府もネオナチということになる。

さらに、たとえウクライナ政府が極右的だったとしても、今回のロシアによる呼びかけが「一般のウクライナ人のことを思いやって」でないのはいうまでもなく、そこにはロシア自身の利益がある。

ウクライナ軍が離反しなくても、ロシア軍が最終的にキエフを占領すれば、やはり親ロシア派政権は樹立されるとみてよい。

しかし、離反者が出て親ロシア派政権ができれば、そちらの方が「コストパフォーマンスが高い」という判断がロシアにあっても不思議ではない。

いかに大きな戦力差があっても、ロシア軍が全土を掌握するのは大変で、それならば戦力差をみせつけてウクライナ軍を離反させられれば、ロシア軍の損耗は減らせる。

ただし、ロシアの呼びかけに呼応するウクライナ人の手によって親ロシア派政権が樹立されれば、事態がより泥沼化する懸念も大きい。徹底抗戦を叫ぶ勢力からみれば、親ロシア派は「裏切り者」以外の何者でもないため、その場合は「ロシアとの国家間戦争」であるだけでなく「ウクライナの内戦」という側面も併せ持つことにもなりかねないからだ。

レジーム・チェンジの罠

レジーム・チェンジ(体制転換)という言葉がある。文字通り一つの国の政治体制がひっくり返ることを意味するが、そのなかには革命など国内の動きによるものだけでなく、外国によるものも含まれる。

このうち外国によるレジーム・チェンジの典型例は、アフガニスタン(2001)やイラク(2003)である。アメリカはアフガンのタリバン政権やイラクのフセイン体制を軍事的に打倒し、その後で憲法と選挙に基づく体制を導入した。

レジーム・チェンジは最終的に失敗しやすい
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