中国のアフリカ人差別でばれたコロナ支援外交の本音
実際、中国に滞在するアフリカ各国の大使は連名で中国政府に状況の改善を要求しており、アフリカの大国ナイジェリアの外務大臣は「差別は受け入れられない」と非難している。
これに関して、中国政府は「人種差別はない」と強調している。また、ジンバブエやアルジェリアなど、とりわけ中国との関係を重視する国も「一部の問題を大げさに言うべきではない」と擁護している。
恫喝より懐柔
その一方で中国政府は、外交問題にまで発展しつつある人種問題を覆い隠すように、アフリカに医療支援を増やしている。
中国は自国の「ピーク越え」宣言と並行して海外に向けて医療支援を始め、その相手は3月末までに世界全体で約90カ国にのぼった。この段階ですでにアフリカ29カ国に中国政府は支援していたが、これに加えて3月25日には中国のネット通販大手アリババがエチオピアを経由してアフリカ54カ国に500台の人工呼吸器などの空輸を開始した。
We are proud to take part in the delivery of medical supplies donated by Jack Ma foundation and Prime Minister Abiy Ahmed initiative. The mission will also continue in the coming days.#Ethiopian. pic.twitter.com/Thm37IzN0b
— Ethiopian Airlines (@flyethiopian) March 24, 2020
なぜ中国から直接各国に運ばず、一旦エチオピアを経由するかといえば、他のアフリカ各国は中国との航空路線をキャンセルしているからだ。そのエチオピアには4月18日、中国の医療チームが支援に入っている。
先進国の場合、相手国との関係次第で援助を減らすことは珍しくない。これに対して、アフリカの警戒と批判に直面する中国は支援を減らして恫喝するのではなく、官民を挙げて支援を増やすことで懐柔しようとしているといえる。
コロナ後を見据えた中国
中国が少なくとも公式にはアフリカへの不快感を示さず、むしろ友好関係をことさら強調することは、医療支援を通じてポスト・コロナ時代の主導権を握ることを目指す中国にとってアフリカへの支援に死活的な意味があるからとみてよい。
アフリカは医療体制が貧弱で、このままではコロナ感染者が半年以内に1000万人にまで増加するとも試算されている。先進国が自国のことで手一杯のなか、ここで「成果」を残すことは、コロナ後の世界で「大国としての責任を果たした」とアピールしやすくなる。
それだけではない。もともと中国にとってアフリカは、冷戦時代から国際的な足場であり続けてきた。
それまで中華民国(台湾)がもっていた「中国政府」としての国連代表権が1971年に中華人民共和国に移った一因には、国連の大半を占める途上国の支持があったが、なかでも国連加盟国の約4分の1を占めるアフリカの支持は大きな力になったといわれる。
「核兵器を使えばガザ戦争はすぐ終わる」は正しいか? 大戦末期の日本とガザが違う4つの理由 2024.08.15
パリ五輪と米大統領選の影で「ウ中接近」が進む理由 2024.07.30
フランス発ユーロ危機はあるか──右翼と左翼の間で沈没する「エリート大統領」マクロン 2024.07.10