コラム

新型コロナ、若者ばかりが責められて「中高年」の問題行動が責められないのはなぜか

2020年03月30日(月)16時30分

東京・上野公園の桜を見に集まった人々 Issei Kato-REUTERS


・外出自粛などに関して行政やメディアが「若者」に特にフォーカスするのは不公平である

・これまで問題行動をとった人には中高年が目立ったが、それらが「中高年」という属性で語られることはなかった

・行政やメディアが主な「顧客」である中高年に緩いことは、世代間の不毛な争いを煽るものである

「若者」にターゲットを絞って外出自粛を呼びかけるのはバランスを欠いているだけでなく、発言力の小さい者の属性を強調するという意味で不公平と言わざるを得ない。

「若者」に特化することへの違和感

コロナをめぐる外出自粛で「自主隔離をしない無神経な若者」のイメージが流布している。

小池都知事は週末の外出自粛を呼びかける記者会見で、特に体力のある若者が無自覚のまま感染を拡大させている懸念があると発言した。メディアでも28日、「外出自粛のはずの下北沢や渋谷を闊歩する若者」が報じられた。

早稲田大学の卒業式後に卒業生らが繁華街で盛り上がって悪目立ちしたのも、これに拍車をかけているかもしれない。

しかし、それでも行政やメディアが「若者」をことさら強調して注意喚起することには違和感を覚える。

筆者は土日の外出自粛が呼びかけられた神奈川県の住民だが、28日に徒歩で横浜駅まで行ってみた。さすがに通常より少なかったものの、一部の百貨店が開店していたこともあってか、それなりに人出はあった。

ところが、そこには若者だけでなく、高齢者も筆者のような中年も、さらには子連れもいた。少なくとも、行政やメディアが盛んにいうように、若者が特に多かった印象はない。

データのない印象

「ただの印象じゃないか」という声が聞こえてきそうだが、まさにただの印象であって、道行く人をカウントしたわけでもなんでもない。

しかし、それでは行政やメディアがいう「若者が目立つ」というのは、確かなデータに基づいているのかというと、少なくとも筆者はそういったものにお目にかかったことがない。

あるのは、下北沢や渋谷などもともと平均年齢が低い繁華街や桜の木の下に集まる若者の映像や画像だけだ。そこだけみせられれば「まったく若い連中は」みたいな論調も出やすいだろう。

だが、それとてデータに基づいていない、統計学でいう有意な相関関係も示していないという意味では、印象に過ぎないのではないだろうか。

それを個人がtwitterでつぶやくならまだしも、行政やメディアがいわば公式にいうなら、例えば同じ日・時間帯の銀座や新宿ゴールデン街など平均年齢の高い街との比較といった、印象ではない根拠を示すべきだろう。

なぜ中高年に特化しないか

さらに重要なのは「若者」だけ属性で取り上げる不公平だ。

コロナに関連してこれまで色々「やらかした」方々、感染を拡大させかねない行動をとった人たちには中高年も多かったはずだ。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、有権者ID提示義務化へ 議会の承認なく

ビジネス

NY外為市場=ドル横ばい、米CPI受け 円は週間で

ワールド

米政権、鉄鋼・アルミ関税引き下げ報道を否定 「決定

ビジネス

米CPI、1月は2.4%に鈍化 基調インフレ圧力は
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の定説に挑む、3人の日本人科学者と外科医
  • 4
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベル…
  • 5
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 6
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    毛沢東への回帰? それとも進化? 終身支配へ突き…
  • 9
    「ドルも弱い」なのになぜ、円安が進む? 「ドル以外…
  • 10
    「賢明な権威主義」は自由主義に勝る? 自由がない…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story