コラム

なぜ右傾化する高齢者が目につくか──「特別扱いは悪」の思想

2019年03月05日(火)18時12分

かつて学生運動で反権力や反戦を叫んでいた世代がなぜ移民排斥や人種差別に走るのか Thomas Peter-REUTERS


・右傾化する高齢者が目立つようになっている。

・ところが、現在の60~70代は若者だった50年前、極めて進歩的とみなされていた。

・この大転換は、この世代に強い反権威的な傾向だけでなく、誰かが特別扱いを受けることへの拒絶反応によって生まれたとみられる。

少し前のことだが、「右傾化する高齢者」が一部で話題になった。とりわけ60代後半から70代前半のいわゆる団塊世代の場合、若い頃にむしろ進歩的だった人でも右傾化しやすい素地があるとみられる。そこには、この世代で特に強い「反権威主義」がある。

高齢者は右傾化しているか

一時、「右傾化する若者」がクローズアップされた。これは日本に限らず、外国人や少数者に対するネット上でのヘイトや抗議デモなどで若者が目立ったのがその一因だろう。

ところが、その一方で、高齢者の右傾化もしばしば指摘されるようになっている。一昨年、朝鮮学校への補助金交付に賛成した(一部はデマだった)という理由で、複数の弁護士に大量の懲戒請求が送られた事件では、逆に威力業務妨害などで提訴されて謝罪や請求撤回に追い込まれた人に60~70代が目立ったという。

もちろん、あからさまに排外主義的な言動をする者はどの世代にもおり、高齢者が全員右傾化しているわけでもない。とはいえ、全体として高齢者の方が保守的なことは、データからもうかがえる。

例えば、平成30年度の内閣府の世論調査で「韓国に親しみを感じる」と回答したのは、18~29歳で57パーセントを超えていたが、年代が上がるにつれ減少し、60~69歳で約31パーセント、70歳以上で約28パーセントにとどまった。

同様のことは、海外でも見て取れる。例えば、アメリカでは年齢層が高くなるほどトランプ政権支持者が多い。また、2016年にイギリスで行われたEU離脱の賛否を問う国民投票では、高齢者ほど離脱賛成が目立った。

権威に批判的な世代

「高齢者はもともと保守的」と割り切るなら、これらの結果は不思議ではない。しかし、現在の60代後半から70代前半にかけての世代は、かつて極めて進歩的とみなされていた

第二次世界大戦後の第一次ベビーブーマーに当たるこの世代は、戦後の自由で民主的な社会の一期生ともいえる。彼らが封建的な気風の強い戦前世代と鋭く対立したのが、1960年代後半から1970年代初頭にかけての大学紛争で、1969年の東大安田講堂事件はその象徴となった。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国春節の海外旅行、ロシア・豪州・タイが人気 日本

ビジネス

サムスン、高帯域メモリー「HBM4」出荷開始 AI

ワールド

中国、国内EVメーカーとEUの個別交渉巡り姿勢転換

ビジネス

インタビュー:報酬最大6000万円で勝負、アクティ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トランプには追い風
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    一体なぜ? 中国でハリー・ポッターの「あの悪役」が…
  • 6
    【独自取材】「氷上のシルクロード」を目指す中国、…
  • 7
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 8
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 9
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 10
    まさに「灯台下暗し」...九州大学の研究チームが「大…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story