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退職者が続出する企業には「セルフ・キャリアドック」が必要だ
辞める本当の理由は、誰にも語らずに去っていく
どの会社でも、従業員が退職するときは退職の理由を確認するケースが多い。だが果たして、辞めていく人間はどこまで本音を語るだろうか。心の奥底にある本当の理由を、去り際に話す必然性はない。立つ鳥跡を濁さないように、多くの人が、本当の理由を心に秘めたまま去っていく。
そのため、辞める時ではなく、普段から従業員の意識や要望を知って、その満足度を高めようという動きも強まっている。
例えば、経営コンサルティング会社のリンクアンドモチベーションは、組織課題を可視化できる「モチベーションクラウド」というサービスに力を入れている。これは、調査項目ごとの期待度と現実のギャップを教えてくれる。取り組むべき課題の優先順位が立てやすく、便利なツールだ。
一方、米国本社の調査会社ギャラップは、「Q12(キュー・トゥエルブ)」という診断ツールを開発し、多くの国で提供している。「職場で、自分が何を期待されているかがわかっている」「職場の同僚が真剣に質の高い仕事をしようとしている」などの基本的な12の項目で、従業員の状況を把握できる。たった12項目で把握できるため、とても実施しやすい。
これら以外にも、従業員満足度を測る調査はたくさんある。企業にとって、従業員の満足度を知るのは素晴らしいことだ。どの調査も組織の状態や従業員の想いを教えてくれる。
本当の理由は、「セルフ・キャリアドック」が教えてくれる
ただ少し口惜しいのは、多くの場合、企業はその従業員満足度調査の結果を活かしきれていないことだ。
「この項目が低いのは、何のことを言っているのだろう」「経営者への信頼が低いが、どんな場面で何を感じてこうなったのだろう」などと、本当の原因を推察しなければならないことが多いのだ。原因を推察しながら、解決策を考えていかなければならない。
これらの調査で全体の課題を俯瞰して把握するだけでなく、個別の従業員の気持ちや不満を知ることができれば、原因の特定はもっと的確になり、解決策も見つけやすい。
それを実現できる仕組みが、前述の「セルフ・キャリアドック」なのだ。
セルフ・キャリアドックとは、従業員のキャリア形成を支援するために、定期的にキャリアコンサルティングの面談やキャリア研修を受ける機会を、企業が提供する仕組みのこと。分かりやすく言うと、プロのキャリアコンサルタントに、従業員が悩みや将来のキャリアについて自由に相談することができる仕組みだ。
セルフ・キャリアドックの費用を負担するのは企業側だ。従業員側は、自由に相談できると言われても、情報が洩れるのではないかと心配になるかもしれない。
しかし、きちんとしたプロのキャリアコンサルタントなら、守秘義務があるため自傷他害の危険がない限り相談内容を本人の了解なしに他言することはない。それは、たとえ経営者や人事部に対しても同じだ。
この守秘義務があるからこそ、従業員は安心して相談することができる。他の社員や人事部には言いにくい本音を話せるのだ。
キャリアコンサルタントは、面談によって把握した組織の構造的な問題や解決すべき課題を、個人が特定できない形で経営者や人事部にフィードバックし、解決を促す。そのため企業にとっては、2つの大きなメリットがある。
1つは、組織の構造的な課題を発見できること。もう1つは、従業員との面談を、経営者視点と働く側の視点の差から生まれるギャップを埋める機会にできることだ。
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