コラム

ファーウェイ問題の核心

2019年01月22日(火)17時49分

データ問題となると情報セキュリティ専門家の領域であり、一般人には難しい話になりがちである。だが、これは一般市民や一般の企業に大いに関係がある話であり、非専門家の理解と判断が重要だと思う。防衛・軍事に対するシビリアン・コントロールは重要であり、それが失われれば際限のない軍備拡張になる恐れがあることはよく理解されているが、情報セキュリティ問題についても同様の危険性がある。

情報通信機器については、メーカーが意図していなくても、脆弱性が発見されてそこがサイバー攻撃を受けるということは日常茶飯事である。ゼロ・リスクというのはしょせん無理な話で、経済性、セキュリティ、発展性などを天秤にかけて判断するしかない。

この経済性と発展性という側面で、いま日本から排除されようとしているファーウェイは極めて優れた企業であるということに我々は注意すべきである。5Gの機器についていえばファーウェイ製品は競合他社に比べて3割も安い(『日本経済新聞』2018年12月14日)。技術面でも競合他社を上回っているとみられる。

5Gの技術については国際標準化機構(ISO)の場で世界的な技術標準作りが行われており、50項目に細分化されて標準が話し合われているが、ファーウェイはそのうち8項目を提案しており、10項目の提案を行っているチャイナ・モバイルに次いで第2位である。他にはエリクソンが6項目、クアルコムが5項目、ドコモとノキアがそれぞれ4項目と続いており、5Gでは中国勢が技術面で主導権を握りそうである(『観察者網』2018年12月24日)。ブリティッシュ・テレコムの技術責任者は、5Gについてはファーウェイから最も優れた提案があるので「目下のところ真の5G機器サプライヤーといえるのはファーウェイだけだ。他社はファーウェイに学んで早く追いついてほしい」と言明している(Light Reading, Nov.21, 2018)。

ファーウェイら中国勢がとりわけ強みを持つのがTDD(時分割複信)の技術である。スマホと基地局との間では双方向にデータを送りあうが、上り(スマホ→基地局)と下り(基地局→スマホ)を分ける方式としてFDD(周波数分割複信)とTDDがある。道路にたとええて言えば、FDDは道路の上り・下りの車線を最初から分けてしまう方式、TDDは道路は常に一方通行であるものの、一方通行の方向が時間によって上りになったり下りになったりする方式である。道路で一方通行の方向がくるくる変わったりしたら車同士の正面衝突が起きるのは必至だが、電波は光速で飛んでいくので理論上はその心配はない。

プロフィール

丸川知雄

1964年生まれ。1987年東京大学経済学部経済学科卒業。2001年までアジア経済研究所で研究員。この間、1991~93年には中国社会学院工業経済研究所客員研究員として中国に駐在。2001年東京大学社会科学研究所助教授、2007年から教授。『現代中国経済』『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える』『現代中国の産業』など著書多数

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏が閣僚刷新検討 イラン戦争が打撃 選挙控

ワールド

商船三井のLPG船がホルムズ海峡を通過 日本関係2

ワールド

ドバイの米オラクル施設に迎撃破片が落下、負傷者なし

ワールド

トランプ政権による大学への人種データ開示命令を仮差
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 2
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 5
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 8
    中国は「アカデミズムの支配」を狙っている? 学術誌…
  • 9
    イラン戦争は「ハルマゲドンの前兆」か? トランプ…
  • 10
    満を持して行われたトランプの演説は「期待外れ」...…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 5
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 8
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 9
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 10
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story