ファーウェイ問題の核心
データ問題となると情報セキュリティ専門家の領域であり、一般人には難しい話になりがちである。だが、これは一般市民や一般の企業に大いに関係がある話であり、非専門家の理解と判断が重要だと思う。防衛・軍事に対するシビリアン・コントロールは重要であり、それが失われれば際限のない軍備拡張になる恐れがあることはよく理解されているが、情報セキュリティ問題についても同様の危険性がある。
情報通信機器については、メーカーが意図していなくても、脆弱性が発見されてそこがサイバー攻撃を受けるということは日常茶飯事である。ゼロ・リスクというのはしょせん無理な話で、経済性、セキュリティ、発展性などを天秤にかけて判断するしかない。
この経済性と発展性という側面で、いま日本から排除されようとしているファーウェイは極めて優れた企業であるということに我々は注意すべきである。5Gの機器についていえばファーウェイ製品は競合他社に比べて3割も安い(『日本経済新聞』2018年12月14日)。技術面でも競合他社を上回っているとみられる。
5Gの技術については国際標準化機構(ISO)の場で世界的な技術標準作りが行われており、50項目に細分化されて標準が話し合われているが、ファーウェイはそのうち8項目を提案しており、10項目の提案を行っているチャイナ・モバイルに次いで第2位である。他にはエリクソンが6項目、クアルコムが5項目、ドコモとノキアがそれぞれ4項目と続いており、5Gでは中国勢が技術面で主導権を握りそうである(『観察者網』2018年12月24日)。ブリティッシュ・テレコムの技術責任者は、5Gについてはファーウェイから最も優れた提案があるので「目下のところ真の5G機器サプライヤーといえるのはファーウェイだけだ。他社はファーウェイに学んで早く追いついてほしい」と言明している(Light Reading, Nov.21, 2018)。
ファーウェイら中国勢がとりわけ強みを持つのがTDD(時分割複信)の技術である。スマホと基地局との間では双方向にデータを送りあうが、上り(スマホ→基地局)と下り(基地局→スマホ)を分ける方式としてFDD(周波数分割複信)とTDDがある。道路にたとええて言えば、FDDは道路の上り・下りの車線を最初から分けてしまう方式、TDDは道路は常に一方通行であるものの、一方通行の方向が時間によって上りになったり下りになったりする方式である。道路で一方通行の方向がくるくる変わったりしたら車同士の正面衝突が起きるのは必至だが、電波は光速で飛んでいくので理論上はその心配はない。
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