アリババ帝国は中国をどう変えるのか?
ほどなくして中国でもインターネットがみられるようになった。馬雲とそのグループはこの時期に政府・国有企業と二つの共同事業を行った。まず、1997年に国有通信会社の杭州電信が「中国イエローページ」に出資して共同事業にすることを持ちかけてきた。続いて、中央政府の対外経済貿易合作部が、電子商取引サイト「中国国際電子商務中心」を立ち上げたいというので馬雲のグループを北京に呼び寄せた。
馬雲たちはこの二つの提案のいずれにも乗るのだが、結局馬雲たちはいずれの事業でも政府・国有企業の側に騙された格好となった。杭州電信は馬雲たちが作った「中国イエローページ」を勝手に複製して乗っ取ってしまう。対外経済貿易合作部は「中国国際電子商務中心」の持ち分の30%を馬雲たちに与えると約束していたが、その約束を守らない。
結果的に馬雲たちは自分たちが立ち上げたウェブサイトを2度にわたって協力相手だったはずの政府・国有企業に奪われてしまう。失意のなか杭州に帰った馬雲たちが1999年に創業したのがアリババである。アリババが手掛けたのは中小企業を対象とするB2B(business to business企業対企業)の電子商取引であった。
ソフトバンクが大株主に
世界の電子商取引で成功しているのは、アマゾンや楽天のようなB2C(business to consumer企業対個人)か、あるいはeBayやヤフオク!のようなC2C(consumer to consumer個人対個人)である。特に日本では、企業間の取引はよく知っている取引相手と長期的かつ安定的に行う傾向が強く、企業間の取引をインターネットを通じて、いわばその場限りで行うというのはなかなか考えにくい。
ところが、中国では製造企業が生地や部品などの中間財を買い入れたり、小売業者が商品を仕入れたりするのに、紹興の化繊織物市場、義烏の小商品市場、深センの電子部品市場など、オープンな卸売市場を利用することがかなり一般的である。特に中小企業は主にそういう卸売市場を利用して製品を販売したり、中間財を仕入れたりすることがよくある。
馬雲もかつて翻訳会社をやっていた時、義烏の小商品市場へ行って靴下や日用品を仕入れて事務所で販売していた。そうした経験から、馬雲は中国では中小企業向けにB2Bの取引を行うプラットフォームを開設すれば商機があるはずだと予想したのだろう。
アリババがB2B取引サイト事業の立ち上げに苦労していた時期に、ソフトバンクの孫正義がアリババに着目し、2000年1月に2000万ドルを出資し、これによってソフトバンクはアリババの大株主になった。
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