アリババ帝国は中国をどう変えるのか?
資金支援を受けてアリババは事業の拡張を続け、2002年に営業黒字への転換を成し遂げた。2003年にはC2Cのプラットフォームである淘宝網、2008年にはB2Cのプラットフォームである淘宝商城(後に天猫TMallに名称を変更)へと事業を展開する。こうした消費者向けのプラットフォームは、製品を安くして消費者を引き付けるためにウェブサイトの利用料金は低く抑える必要がある。アリババは有料のB2Bのプラットフォームで収益を上げ、それによってC2CとB2Cの利用料金を低く抑える戦略をとることで、後者の販売規模を拡大していった。
特に、B2Cの淘宝商城(天猫)では2009年から毎年11月11日を大セールの日と定めて販売促進イベントを行った。こうした活動の結果、電子商取引はすっかり中国の庶民に浸透し、天猫はそのなかで圧倒的なシェアを誇っている。2016年のB2C市場における天猫のシェアは56.6%である。
アリババの成功を語るうえで「支付宝」(Alipay)のことは外せない。先進国ではB2Cの取引ではクレジットカードを使うことが多い。一方、ヤフオク!のようなC2Cの取引では銀行振込を使うが、代金を振り込んだあと、果たして相手がちゃんと品物を送ってくれるのか、見知らぬ相手との取引だけに一抹の不安がよぎるのは否めない。
公共料金の支払いにも
クレジットカードが普及していない中国では、B2Cの取引でも銀行振込などを使わざるをえないが、それだと消費者は品物が送られてこないとか、劣悪なものが送られてくるのではないかという不安を持つことになる。
支付宝はインターネット上に現金を授受する口座を設け、買い手から代金が支払われたら商品を発送し、買い手のもとに品物が到着したら売り手の口座に入金、という仕組みを作ることによって売り手・買い手双方の不安を取り除くシステムである。インターネットを通じた見知らぬ相手との現金の授受を安心して行える支付宝や微信支付(テンセントが運営するネット上の支払いサービス)が存在しなければ中国で電子商取引が発展することは不可能だった。
いま中国では支付宝や微信支付をネット上の買い物だけでなく、コンビニでの買い物、電気や水道など公共料金の支払い、自動販売機での支払いなどに使う人がすごく増えている。自転車シェアリングや現金の投入口のない自動販売機など、消費者がスマホで支付宝や微信支付を使える状態になっていることを前提としたサービスも次々と登場している。
EVと太陽電池に「過剰生産能力」はあるのか? 2024.05.29
情報機関が異例の口出し、閉塞感つのる中国経済 2024.02.13
スタバを迎え撃つ中華系カフェチェーンの挑戦 2024.01.30
出稼ぎ労働者に寄り添う深圳と重慶、冷酷な北京 2023.12.07
新参の都市住民が暮らす中国「城中村」というスラム 2023.11.06
不動産バブル崩壊で中国経済は「日本化」するか 2023.10.26
「レアメタル」は希少という誤解 2023.07.25