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ネット空間に溢れる「インプットなきアウトプット」の弊害
匿名性の高いネット空間には、思慮分別のない暴論が溢れている(写真はイメージです) Chainarong Prasertthai-iStock
<理性より感情、熟考より直感──リアルタイムでの反応を強いるネット空間には「アウトプット中毒」が溢れ、インプットが置き去りにされる>
ニュースの見出しを見ただけで、内容をじっくり読まずにコメントしたくなる「アウトプット中毒」が顕著のようだ。「スマホ中毒」とも相まって、ネット上での発言をやめられない日々が続く依存傾向である。
「SNS中毒」も深刻らしい。アメリカのジョージア大学の研究によると、SNSへの中毒症状が強ければ強いほど、「ネットいじめ」を行う傾向も強いという。ネットいじめとは、個人攻撃、差別的発言、誹謗中傷の拡散、社会的排除の扇動、個人情報の暴露などのことだ。日本でも、ネットいじめによって、何人もの人が自殺に追い込まれている。
自殺をも誘発してしまうアウトプット中毒。その背景には、ウェブニュースやSNSのスピードが加速し、リアルタイムでの反応を強いられていることがある。リアルタイムで反応している限り、インプットする時間的余裕はない。インプットに努めれば、自然と冷静でいられ、ネットいじめにも手を染めにくくなるが、そうはさせてもらえない。その結果、インプットなきアウトプットは、そのほとんどが社会にネガティブな結果をもたらす。
日本と同調圧力の歴史
今でこそアウトプット中毒が顕著だが、かつて日本ではアウトプットの欠乏こそ問題だった。インプットを押し付ける同調圧力が強かったため、アウトプットしようとすれば、村八分になりかねなかった。その結果、学校では教師による一方通行の授業が続き、会社では形式的・儀式的な会議が普通だった。アウトプットできるのは、集団の仕切り役に限られていたわけだ。
しかし、それでは国際競争に勝てる人材を輩出できないし、個性の尊重や人権がないがしろにされてしまう。そこで、海外からアクティブ・ラーニングやプレゼンテーションなどが輸入され、インプットとアウトプットのバランスが図られた。もっとも、相変わらず同調圧力は強いので、海外と比べればアウトプット不足は否めない。
そもそも、同調圧力の起源は4万年前にまで遡る。アフリカで長い時間をかけてサルから進化したヒト(ホモ・サピエンス)はやがて世界に広がっていき、4万年前ごろに日本列島に移り住むようになった。アフリカで戦いに敗れたのか、あるいは争うことが嫌いだったのか、いずれにしても、あるグループがアフリカを後にして極東にまでやってきた。これが日本人の祖先である。
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