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世界に押し寄せる「オーバーツーリズム」の津波...観光客数を「制限」する規制も、各国が続々採用
スペインのバルセロナで開かれた反ツーリズムのデモ(6月20日) Paco Freire / SOPA Images via Reuters Connect
<訪日客数が過去最高を記録。各国でオーバーツーリズムへの反発が強まるが、問題を単純化しすぎた対策は解決策にならない>
[ロンドン発]日本政府観光局(JNTO)によると、6月の訪日客数は313万5600人となり前年同月比で51.2%増、コロナ前の2019年同月比で8.9%増となった。単月として過去最高を記録した。上半期累計で1777万7200人となり2019年同期の過去最高を100万人以上上回る。
子どもたちの休みに合わせた需要の高まりに加え、台湾、フィリピン、米国などで訪日客数が増加した。18カ国・地域で訪日客数は6月の過去最高を記録。ロンドン暮らしの筆者の周辺でも円安に惹かれて日本に行きたいという友人が激増している。
日本政府は昨年3月、観光立国推進基本計画を更新。「持続可能な観光」「消費額拡大」「地方誘客促進」を3本柱に訪日外国人旅行消費額5兆円、国内旅行消費額20兆円の早期達成を目指すとともに、来年までに持続可能な観光地域づくりに取り組む地域を100に広げる目標を掲げた。
観光公害もうれしい悲鳴?
日本は電気をつくる燃料となるエネルギー資源の9割を海外に依存する。製造拠点も海外に移転し、輸出を促進する円安の追い風は吹かない。デジタル関連サービスの赤字「デジタル赤字」も膨らみ、インバウンドは新たな収入源として期待される。
秡川直也観光庁長官によると、このペースで推移すれば今年のインバウンド消費額は8兆円も視野に入る。観光地に旅行客が集中し、地元住民の暮らしを圧迫するオーバーツーリズム(観光公害)も観光客不足でホテルや旅館の閉店が相次いだ数年前に比べるとうれしい悲鳴なのか。
山梨県は富士山の登山規制、姫路城は二重価格を導入し、対策に乗り出した。筆者も最近、日本に一時帰国したが、オンライン予約した宿泊施設の支払いがサイトの表示価格の2倍前後にハネ上がったケースが重なり、閉口した。「予約を一方的に取り消された」とぼやく友人もいる。
「過剰観光に反対」「プライベートジェットを止めろ」
エネルギーに乏しく、米国のマグニフィセント・セブンのようなテクノロジー企業がない欧州では、旅行・観光業が国内総生産(GDP)の10~20%を占める国が少なくない。最近、スペインで2番目に人気の高いマヨルカ島で過剰観光に抗議する1万人規模のデモが起きた。
「過剰観光に反対」「プライベートジェットを止めろ」と旅客機やクルーズ船の模型を掲げてデモ隊が練り歩く。反ツーリズム活動家は今年、バルセロナ、パルマ・デ・マヨルカ、マラガ、カナリア諸島などスペインで人気の観光地で抗議デモを繰り返している。
集合住宅が観光客用に改造され、投機目的の資金が流れ込んで住宅価格や物価を押し上げる。観光客はビーチを埋め尽くし、公共サービスの負担になる。バルセロナでは、12時間未満しか滞在しないクルーズ客に対する観光税が引き上げられる。