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次のイギリス総選挙で政権奪還は確実か...労働党の「鉄の財務相」が打ち出す「成長の3本柱」に注目が
Alessia Pierdomenico/Shutterstock
<「英国は1970年代の危機再発に直面」と、最大野党・労働党のレイチェル・リーブス影の財務相。一方のスナク首相は支持率低迷にあえぐ>
[ロンドン発]英国の次期総選挙で14年ぶりの政権奪還が確実視される最大野党・労働党のレイチェル・リーブス影の財務相は3月19日の講演で「英国は1970年代と同様、政治的混乱と危機再発の瞬間に直面している。その重荷は労働者の肩にのしかかっている」と指摘した。
英国は昨年第3、4四半期連続でマイナス成長に陥り、景気後退入りした。今年2月時点のインフレは持ち家住宅費を含む消費者物価指数(CPIH)で年率3.8%。食品・飲料5%、衣服・靴5%、健康6.6%、通信5.7%、外食・宿泊6%と落ち着いてきたとは言え、まだ高い。
リーブス氏は「その根底には、急速に変化する世界で英国が競争するために必要なサプライサイド改革の失敗がある。強固で安全な基盤の上に成長を築き、3本の柱によってもたらされる積極的な政府を持つことだ」と、一に「安定」、二に「投資」、三に「改革」を挙げた。
過去10年間、英国経済が経済協力開発機構(OECD)平均の成長を遂げていれば現在の経済規模は1400億ポンド大きく、1世帯当たり5000ポンド増、500億ポンドの税収増に相当する。「今日、英国は他の国々に遅れをとり、さらに落ち込んでいる」との見方をリーブス氏は示す。
「退屈なスナク首相では総選挙で惨敗する」
英国経済が落ち込んだのは欧州連合(EU)離脱、コロナ危機の後遺症、西側と中露の対立、ウクライナ戦争、イスラエル・ハマス戦争の影響が大きい。EU離脱では煩雑な通関手続きが復活した。モノだけでなく、欧州とのヒト・カネ・サービスの流れは完全に停滞した。
EU離脱派に象徴される保守党の傲慢さと政治の不安定性が英国への投資意欲を削ぐ。政治と経済の正常化に努めるリシ・スナク首相は「退屈で総選挙に惨敗する」と妖艶なペニー・モーダント下院院内総務を担ぐ動きが浮上したのには呆れ果てた。悪酔い政治はもうたくさんだ。
オックスフォード、ケンブリッジ、インペリアル・カレッジ・ロンドン、UCLをはじめTHE世界大学ランキング24年のトップ100校に入る英国の大学は11校。しかし22年OECD生徒の学習到達度調査(PISA)で英国の読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーは13~15位止まり。
英国の弱点は義務教育の達成度も労働者の勤労意欲も高くないことだ。それを海外からの留学生や移民で補ってきたが、EU離脱で質の高いEUからの留学生や移民は逆戻りした。EU域外からのヒトの流れは大幅に増えたものの、それが英国経済に与える影響は未知数だ。