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カトリック系初の北アイルランド首相が誕生...オニール氏の下でアイルランド「再統一」論が熱を帯びる
オニール氏の父親はIRA暫定派として囚われの身となった。オニール氏はIRAの爆弾テロの正当性を支持し、紛争中に亡くなったIRAのメンバーに敬意を表している。アイルランド共和主義の伝統を破ってエリザベス女王の国葬やチャールズ国王の戴冠式に出席したことで称賛されたが、過去にIRAの記念式典に出席したことで批判を浴びたこともある。
英紙フィナンシャル・タイムズは2月4日付社説で「北アイルランドの象徴的瞬間だ。しかし今、必要なのは『再統一』論争ではなく正常な政府だ」と釘を刺す。「アイルランドの南北再統一を唱えるナショナリスト初の首相、北アイルランドが英国の一部だと強硬に主張するDUPの副首相が誕生するとは、ベルファスト合意の時には想像だにしなかった」という。
再統一より先に取り組む課題は山積み
北アイルランドとアイルランド国境の両側でシン・フェイン党は躍進し、南北再統一につながる住民投票が行われる可能性の議論は一段と熱を帯びる。シン・フェイン党のメアリー・ルイーズ・マクドナルド党首は「チャンスの10年だ。与えられた再統一のチャンスは計り知れない。誇張しても言い過ぎではない」とアイルランドの公共放送に強調した。
昨年12月、アイルランド紙アイリッシュ・タイムズに掲載された北アイルランドでの世論調査によると、再統一に賛成は30%で、反対は51%にのぼった。しかし、再統一を問う住民投票を受け入れることはほぼ無理と答えたユニオニストは前年の32%から23%に減っていた。カトリック系の人口割合が増えるにつれ、秤は自然と再統一へと傾いていく。
「権力分立政府の復活は財政と公共サービス、特に医療の絶望的な状況を改善するチャンスだ。英国政府から33億ポンド(約6200億円)の資金援助が受けられる。EUと英国の両市場への特権的なアクセスというEU離脱後の北アイルランド独自の立ち位置から恩恵を受けられる。再統一の話は時期尚早だ」(前出のフィナンシャル・タイムズ紙社説)
自治政府が2年間機能停止していたことで問題は山積している。英紙タイムズ(2月3日付)は(1)崩壊しつつある医療サービス(2)公共セクターの賃金上げスト(3)経済機会(4)カトリック系シン・フェイン党とプロテスタント系DUPの権力分立――という4つの課題を挙げている。