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夢と消えた「中国の60兆ドル金融市場」 米中対立で「儲け話が暗転」...国家安全保障を最優先する習近平
香港ウオッチの共同設立者ジョニー・パターソン氏は「MSCIエマージング・マーケット・インデックスに採用されている13社は中国当局のウイグル族強制労働や収容所建設に関与していることが知られている。国際的な金融機関が人権やESG(環境・社会・ガバナンス)の『S(社会)』をどれほど真剣に受け止めているかという深刻な疑問が生じる」と語る。
カナダの年金制度投資委員会(CPPIB)や公務員年金基金、大学基金、ブリティッシュコロンビア州、オンタリオ州、アルバータ州、ケベック州の年金基金もMSCIエマージング・マーケット・インデックスなどの「インデックス・ファンド」を通じて、中国当局の人権弾圧に加担していることが濃厚な企業に投資していた。
「次は民主主義の自由が奪われる」
英投資プラットフォーム会社AJベルの取締役会議長を務めたヘレナ・モリッシー氏は「西側諸国はすでに中国に経済的に依存するようになり、多くの人々にとって撤退は不可能と思えるのかもしれない。しかし敗北主義は非常に危険だ。今日行動を起こすのは難しく思えても、明日はもっと難しくなる」と警鐘を鳴らしている。
00年3月、当時のビル・クリントン米大統領は「世界貿易機関(WTO)に加盟することで、中国は単にわが国の製品をより多く輸入することに同意しているのではなく、民主主義が最も大切にしている価値観の一つである経済的自由を輸入することに同意しているのだ」との考えを示した。
「中国が経済を自由化すればするほど、中国国民の潜在的な能力、すなわち自発性、想像力、卓越した企業精神がより完全に解放されることになる」ともクリントン氏は強調した。しかし「そんなことは起こっていない。その代わり、西側は産業力を手放したのだ。次は民主主義の自由が奪われるかもしれないと懸念するのは突飛な話ではない」(モリッシー氏)
20年、中国の習近平国家主席は外資系保険会社が中国保険市場の4分の3を占める生命保険を提供する100%出資会社を設立したり、外国人が全額出資の投資信託運用会社を設立したり、海外企業が先物取引を行うために独自の事業体を設立したりできるようにする金融市場の開放政策を進めた。
19年の地方銀行を皮切りに、証券会社、投資信託会社、生命保険会社、先物取引会社の完全な外国人所有を許可しだしたため、「中国の60兆ドル金融市場」にブラックロック、JPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックス、HSBC、バンガード、シュローダーといった米英の巨大マネーが一斉になだれ込んだ。