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英国で平均寿命が伸びない理由...「集団自決」などなくても長生きできない厳しい現実とは?
最富裕層で伸びる平均余命
英国の平均余命は最貧困層で短くなったのに対して、最富裕層では伸びた。貧しい少女と豊かな少女の平均余命の差は11年には6.8歳だったのに17年には7.7歳まで開いた。少年の場合はその差は9.1歳から9.5歳に拡大した。「すべての人の医療とケアを改善する」ことを使命にする英シンクタンク「国王基金」のヴィーナ・ローリー上級研究員はこう解説する。
「1841年に生まれた男性の平均寿命は40.2歳、女性は42.3歳。これは主に乳児期と小児期の死亡率が高かったためだ。栄養、住居、感染症対策など公衆衛生の改善で死亡率は低下し、1920年に平均寿命は男性56歳、女性59歳まで延びた。20世紀には小児予防接種、国民皆保険、心臓病やがんなど成人病治療の進歩、喫煙の減少で平均寿命は飛躍的に向上した」
2019年、イングランドの平均寿命は男性79.9歳、女性83.6歳だったが、コロナ危機の20年には男性で1.3歳減の78.6歳、女性で1歳減の82.6歳と10年前の水準になった。男性の健康寿命は63.1歳、女性は63.9歳。最も恵まれない10%の地域の男性は最も恵まれない10%の地域よりほぼ10年長く生きられると予想され、女性の場合はその差は8年だった。
平均寿命の格差の約3分の1は恵まれない地域で心臓病や呼吸器疾患、肺がんによる死亡率が高いことに起因している。主な危険因子の喫煙と肥満は恵まれないグループほど高くなっていた。一方、平均寿命が急激に短くなった米国では薬物、アルコール、自殺による「絶望の死」が最も大きな被害をもたらしている。
世界金融危機とその後の緊縮財政で貧富、健康、教育すべての格差が拡大した。貧しい家庭は生鮮食品を買って栄養のバランスの取れた食事を用意したり、運動したりする余裕もない。糖分や炭水化物が多く含まれた低価格の食品やスナックは肥満の最大の原因だ。筆者は健康寿命を1日でも長く延ばすため軽いジョギングと散歩、筋トレに精を出し始めた。