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「日本人の責任とは思わない」の声もあるが...英史上最悪の「冤罪」事件、富士通の責任は?
フロアにはSSCのスタッフ25~30人と6人以上の検査チームがいた。ホライゾンに接続されたコンピューター1台と電子メールの送受信やインターネットの検索に使うもう1台のコンピューターがあった。支店で現金過不足が発生した場合、ロール氏らは24時間分のデータと何千行ものソフトウェア・プログラムに目を通した。
より簡単にエラーを見つけられるよう無関係なデータを取り除いていく。エラーが1つなら特定するのは簡単だが、雪ダルマ式に増える複数のエラーがしばしばあった。準郵便局長の計算ミスなのか、コードのミスなのか、それともその両方なのか。「私たちの任務はホライゾンを稼働させ、富士通が金銭的ペナルティーを受けないようにすることだった」という。
コーディングの問題点を発見できれば、もうけものだった。銀行振込が3日以内に行われなければ、富士通UKがポストオフィスに支払う金銭的ペナルティーが発生する。1件1件はわずかでも滞る取引数によって罰金は何千倍にも膨れ上がってしまう恐れがある。ロール氏らの仕事は金銭的ペナルティーを最小限に抑えながらシステムを回し続けることだった。
「システムを一から書き直す必要があった」
「根本的な原因はホライゾンがクソだ、ということはみんな知っていた。システムを一から書き直す必要があった。しかし、そのようなことは起きなかった。なぜなら、そのための資金もリソースもなかったからだ。富士通がポストオフィスにホライゾン・プロジェクトから撤退すると告げていたら、まずいことになっていたはずだ」(ロール氏)
ホライゾンのコーディングには定期的に問題が判明した。ロール氏らは問題を富士通のソフトウェア開発者に報告した。開発者は修正に取り組み、ロール氏はその問題に関連するシステムの監視を続けた。準郵便局長らからホライゾンによる現金過不足の苦情が申し立てられた場合、ロール氏らは問題をフォローするよう頼まれた。
他の準郵便局長らにも影響を及ぼすバグやエラーが見つかってもデータの矛盾やエラーの原因がホライゾン自体にあることは知らされなかった。準郵便局長に知らせずにブラックネルのオフィスから支店カウンターのデータを修正する場合もあった。多くの場合、カウンターのデータの問題を特定した。何が問題なのかは分かっていたので修正できた。
準郵便局長らには「支店のカウンターにデータの破損か何かが発生し、修正する必要がある。修正しなければ、あなたのアカウントに問題が生じるだろう」とだけ伝えられた。根本的な問題を引き起こしたのがコーディングエラーであることが準郵便局長らにフィードバックされることはなかった。そして冤罪は産み落とされた。