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「脱化石燃料」は大きく後退...いま必要なこととは? 元国連大使・星野俊也氏が見たCOP27
元国連大使の星野俊也・大阪大学大学院教授(筆者撮影)
<コロナとウクライナ侵攻で逆戻りを余儀なくされている気候変動対策と、今回のCOP27を星野俊也・大阪大学大学院教授はどう評するのか>
[シャルム・エル・シェイク(エジプト)発]紅海に面した世界有数の海洋リゾート、シャルム・エル・シェイクで開かれた国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)は2日延長し20日、気候変動の「損失と損害」を支援する基金設立で歴史的に合意して閉幕した。
しかし温室効果ガス排出量の削減目標引き上げや化石燃料の段階的削減について大きな進展はなかった。米ニューヨークの国連本部で日本政府代表部大使・次席常駐代表(2017~2020年)を務めた星野俊也・大阪大学大学院教授(国際公共政策)・ESGインテグレーション研究教育センターディレクターはCOP27をどう見たのか。
星野氏は現地で筆者のインタビューに応じ、閉幕後、補足してもらった。
──これまで先進国側が無制限の責任を負わされかねないと慎重な姿勢を見せてきた気候変動による「損失と損害」について実に30年越しの大きな進展が見られました。国際環境NGOも歓迎しました。 どう評価されますか。
星野俊也教授(以下、星野) 「損失と損害」は特に途上国にとってはリアルな課題ですし、持続可能な未来への公正な移行の観点からも見過ごせない論点ですから、今回のCOPで議題化され、詳細は次回に持ち越されたとしても、会期を延長してまで基金設立に合意できたことは一定の意義があると思います。
アフリカ開催で、新興国のエジプトが議長だったからこそ、先進国も落としどころを探り、妥協が成立したのだと思います。ただ、資金は「緩和」にも「適応」にも必要です。基金の乱立は、相互に関連した問題の統合的な取り組みを難しくしかねません。
「損失や損害」の手当は過去の被害からの復興であるとすると、その国が現在や将来の気候危機への抗たん性やレジリエンス(筆者注、回復力、復元力のこと)を高める基盤整備と切り離すことはできず、それは「適応」や「緩和」の努力ともつながります。
また、基金を通した支援が推奨されても、日本のように二国間で迅速に被災国の人道・復興支援を直接提供できたり、すでに現地の国連機関などの活動の強化を進めたりできる国にとっては基金への拠出が唯一の国際協力でないことも理解され、評価される必要があります。
財源の予測可能性という観点から基金設置への期待はわかりますが、作るのであれば運用面で重たい官僚体質にならないガバナンスは不可欠ですし、各国からの公的資金だけに頼らない、より革新的な資金調達メカニズムも考慮されるとよいのではないでしょうか。
(筆者注)英シンクタンク、王立国際問題研究所(チャタムハウス)によると、「緩和(温室効果ガス排出の回避と削減)」や「適応(現在および将来の気候変動の影響への適応)」によっても回避できない破壊的な影響のことを「損失と損害」という。