コラム

ロシア軍から首都を「死守」せよ! 抵抗組織リーダーが語る「キエフ攻防戦」の現実

2022年03月16日(水)11時55分

「モスクワは最大のターゲットであるキエフを包囲しようとしている。キエフの東、北、西のいたるところにロシア軍がいる。キエフからの出口は南と南西だ。私たちはまだ包囲されていない。ロシアはキエフを包囲して政治、情報、軍事のすべての面でウクライナ政府に圧力をかけるつもりだ。彼らは重砲を使ってキエフを砲撃している。問題はどれだけ長くキエフの中心部からロシアの大砲を遠ざけることができるかだ」

「ロシア軍がキエフ市街に、そして住宅街に近づけば近づくほど、私たちは脆弱になる。彼らは郊外の住宅街だけでなく、聖ソフィア大聖堂から2キロメートルも離れていない政府中枢、つまり私が今いる所を攻撃できる。ロシア軍が市街地に近づいて大砲を配置したら、マリウポリやハルコフでやったようにキエフを破壊するだろう。そうはさせないのが私たちの使命だ」

220316kmr_utd03.png

ロシア軍侵攻の現状(3月15日現在) 英国防省

──キエフを包囲しようとしているロシア軍の狙いは

「ロシア軍はキエフを包囲して必要な物資、食料、薬、軍事物資を遮断しようとしている。包囲されると外部からの支援を受けられなくなる。多くのボランティアがキエフに駆けつけ、領土防衛隊の一員になっている。ロシア軍がいったんキエフを包囲したら閉じ込められた市民を人質に取り、私たちの政府に受け入れがたい譲歩を強いるだろう。首都が陥落したら、国が陥落したも同じで、ロシアの囚われの身になるということだ」

「モスクワはウクライナからすべての権利を奪い、麻痺した政府機関をすべて乗っ取るつもりだ。議会やその他の政府機関は砲撃されていない。彼らはキエフを掌握したあと議会を招集し、非武装化などの要求をのませたいのだ。私たちの任務はできる限りロシア軍をキエフ市街から遠ざけることだ。戦争が始まる前、私たちはキエフ郊外で地域社会のメンバー、地方自治体の支援で侵略者を退ける領土防衛隊の大隊を組織した」

「侵略に備える私たちは地域の指導者にパラノイアのように思われた。しかし最初のミサイルが領土防衛隊の訓練場に落ちてきた時、志願者や地域社会の人々が全ての力を結集してロシア軍に抵抗し始めた。初日が重要だった。皆さんはご存知ないかもしれないが、敵はキエフの北に位置する貯水池ダムの近くで私たちの抵抗と防御を破ろうとした。敵の偵察部隊がキエフに潜入してきたため、私たちは彼らと戦わなければならなかった」

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米国との建設的な対話に全面的にコミット=ゼレンスキ

ワールド

米、ロシアが和平合意ならエネルギー部門への制裁緩和

ワールド

トランプ米政権、コロンビア大への助成金を中止 反ユ

ワールド

ミャンマー軍事政権、2025年12月―26年1月に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題に...「まさに庶民のマーサ・スチュアート!」
  • 3
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMARS攻撃で訓練中の兵士を「一掃」する衝撃映像を公開
  • 4
    同盟国にも牙を剥くトランプ大統領が日本には甘い4つ…
  • 5
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 6
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 7
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望…
  • 10
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 8
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 9
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 10
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story