コラム

ロシア軍から首都を「死守」せよ! 抵抗組織リーダーが語る「キエフ攻防戦」の現実

2022年03月16日(水)11時55分

「ウクライナの防衛システムはロシア軍の攻撃が厳しさを増すにつれ、さらなる困難に瀕している。防空警報で市民が防空壕として使っている地下鉄の入り口に殺到すると、彼らはそこを狙って爆撃してくる。私たちの抵抗でロシア軍の前進はスローダウンしたが、逆に大規模な砲撃や爆撃が激しくなった。私たちも砲兵隊を街の中に配置し応戦することもできるが、 それは住民を危険にさらすことになる」

──ロシアとの交渉をどうみるか

「ロシア軍は村に大砲を設置し、村民を人質の壁にして砲撃を続けている。人の命を弄んでいるのだ。携帯電話をかけようとしている人を見つけては撃ち殺し、携帯電話を奪っている。ロシア軍が占領した村では供給が途絶え、火災が発生しても緊急車両は村の中に入れてもらえない。それがウクライナで起きていることだ。抵抗運動は火炎瓶や銃で反撃するだけでなく、ウクライナのイメージをアップする情報戦争にも関わっている」

「SNS上には、ウクライナがロシアを脅かしているという偽情報が拡散している。ウクライナを無理にでも譲歩させようとする試みが見られる。殺人犯(ロシア)に襲われた人(ウクライナ)が殺人犯に譲歩すべきなのか。なぜウクライナが憲法を改正して東部親露派地域に特別な自治権を認めなければならないのか。私たちは攻撃されたのに、なぜ譲歩しなければならないのか。それは道徳や人の道を外れている。交渉の余地はない」

「私たちには非常に強力な組織がある。戦車が村に近づくと、村人たちは自発的に戦車に火を放つ。市民の抵抗は新しい機会を与えてくれる。地域住民によって結成された領土防衛隊は自分たちの地域社会を守っている。彼らはあまり組織化されておらず、ウクライナ軍に直接、属しているわけではないものの、武装して団結し、略奪を防ぐために自分たちの住宅やコミュニティーを守っている」

「私たちの抵抗運動はごく最近になって出てきた概念だ。憲法によれば、すべてのウクライナ人は自国を守る権利がある。私たちはウクライナの法律に基づいて行動している。ゲリラ戦や破壊工作対策、市街戦の専門家、東部紛争で戦った退役軍人らを一つのユニットに集めている。私たちはいずれ市街戦を戦わなければならない。防諜機関、特務機関、異なる都市の軍とも連携しているため、相互運用が可能だ」

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

インド総合PMI、12月は58.9に低下 10カ月

ビジネス

プライベートクレジット、来年デフォルト増加の恐れ=

ワールド

豪銃撃、容疑者は「イスラム国」から影響 事件前にフ

ワールド

スーダン、人道危機リストで3年連続ワースト1位 内
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 8
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story