コラム

ワクチンが効かない?南アフリカ変異株「オミクロン」、悪夢のシナリオ

2021年11月27日(土)11時38分

「ゲノムから約50の変異が確認され、そのうち30以上はスパイクタンパク質にある。細胞受容体に結合する部分にもこれまでのVOCより多い10の変異がある。問題はオミクロン株がより広い地域に存在するかどうかだ。疫学的に見て、この変異株は感染性が高い可能性があり、免疫回避に関連する変異も存在している」

「ワクチンや自然感染による免疫力が低下しているかどうか、感染者のデータを得ることが必要だ。 それまでの間、ワクチン接種のペースを保つべきだ。 オミクロン株が重症化につながるかについても情報がない。アルファ株の場合と同じように、感染後、ウイルスを排除できなかった免疫不全患者の体内で変異したのではないかという仮説が立てられる」

「初期の観察ではハウテン州でオミクロン株がデルタ株を凌駕したことが示唆されている。 オミクロン株に関連した大規模なスーパースプレッダーイベントがあったのか、それとも実際にオミクロン株がデルタ株を凌駕したのか。オミクロン株がヒトに感染するのにより適合したのかを確認するにはさらなる研究が必要だ」

「1年前にケント州で発生したアルファ株の流行を思い起こさせる。異なるのは効果的なワクチンがあることと変異株の知見が蓄積されていることだ。さらなる科学的証拠を待つか、今すぐ行動して必要でなかった場合に後から引き返すのか、2つのアプローチがある。 私は厳しく、早く、速く行動し、間違いがあれば後で謝罪する方が良いと考える」

「アフリカのワクチン接種率はわずか11%」

英サザンプトン大学のマイケル・ヘッド上級研究員(グローバル・ヘルス担当)は「アフリカの人口のうちコロナワクチンを1回でも接種したことのある人はわずか11%程度。 これまでのところサハラ以南のアフリカ諸国の多くは公衆衛生や医療サービスのリソースが非常に限られているにもかかわらず、流行をうまく抑えてきた」と評価する。

「しかし感染しやすい集団がたくさんあるため、コロナの流行が低所得層の医療サービスを圧迫する可能性は十分にあり、その結果、新たなVOCが増える恐れもある。これはワクチン展開の不公平さがもたらした結果であり、富裕国が十分すぎるワクチンを手にしたとしても、いつかは自分たちに跳ね返ってくる」

ヘッド上級研究員は20カ国・地域(G20)の意思決定者に対して途上国へのワクチン展開を加速させるよう求めた。

新興感染症に対するワクチンの開発を促進し、世界中の人々が流行時にワクチンを接種できるよう取り組むパートナーシップ「CEPI(Coalition for Epidemic Preparedness Innovations)」のリチャード・ハチェットCEOは「オミクロン株の出現は、コロナワクチンの研究開発を継続することの重要性を浮き彫りにした」と指摘する。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英雇用7カ月連続減、賃金伸び鈍化 失業率4.7%

ワールド

国連調査委、ガザのジェノサイド認定 イスラエル指導

ビジネス

25年全国基準地価は+1.5%、4年連続上昇 大都

ビジネス

豪年金基金、為替ヘッジ拡大を 海外投資増で=中銀副
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story