コラム

脱石炭で前進「気温上昇は摂氏1.8度に」IEA事務局長がCOP26の成果報告 追い詰められる日本

2021年11月05日(金)11時50分

中国や日本、韓国が海外の石炭火力発電への融資を終了すると発表したのに続いて、英HSBCなど主要な国際銀行も21年末までに削減措置のない石炭火力発電への公的融資を事実上停止することを約束。アメリカを含む少なくとも25の国と公的金融機関が22年末までに削減措置のない化石燃料エネルギー部門への国際的な公的支援を終了することを誓約した。

PPCAにも28の新メンバーが加わった。これで190の国・地方政府・団体が石炭火力発電の段階的廃止、新規石炭火力発電所への支援終了で合意したことになる。PPCAのイベントに参加したウクライナ環境保護・自然資源省のイリナ・スタブチャク副大臣はこう宣言した。

「PPCAに加盟したわが国は35年までに脱石炭を実現する。温室効果ガス排出量を30年までに1990年比で65%削減する。まだエネルギーの30%を石炭に依存しており、脱石炭化は簡単な道ではない。しかし他の選択肢はない。再生可能エネルギーへの転換、EUの送配電網への統合、エネルギーの効率化を図る」

COP26議長「石炭火力発電の終焉が目前に迫っている」

これで国や金融機関、機関、団体が石炭使用から脱却し、石炭は歴史として記憶される。化石燃料からクリーンエネルギーへの移行に向け年間推定178億ドル(約2兆260億円)の公的支援がシフトする可能性がある。パリ協定が採択されて以来6年間で、世界で計画されている新規の石炭火力発電所の数は76%減少(1千ギガワット以上に相当)した。

インドネシアやフィリピンも石炭火力発電所の早期閉鎖を支援するためアジア開発銀行(ADB)との先駆的なパートナーシップを発表した。アロック・シャルマCOP26議長は「COP26は石炭を歴史に埋めるCOPでなければならない。石炭火力発電の終焉が目前に迫っている」と力を込めた。

kimuram211105_cop26_3.jpg

日本政府に国内の石炭火力発電所を段階的に廃止するよう求めるピカチュウ(筆者撮影)

4日朝、COP26会場近くで、日本政府に対し石炭火力発電の海外輸出を止め、国内の石炭火力発電所も30年までに段階的に廃止するよう求めるNGOの連合体「No Coal Japan」のメンバーがピカチュウの姿をして抗議活動を行った。日本政府は先進7カ国(G7)首脳会議で新規の海外の石炭火力発電への直接支援を21年末までに終了することを約束している。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story