コラム

「感染力強いデルタ株のR(再生産数)は最大7」英当局 日本はワクチン接種急げ

2021年06月17日(木)11時47分
来日したコーツIOC副会長

デルタ株は日本でも12都府県で検出されている(写真は6月15日、オリンピックの準備を監督するために来日したコーツIOC副会長) Issei Kato-REUTERS

<ワクチン接種が進んだイギリスで、インド変異株(デルタ株)の感染爆発が止まらない。オリンピック開催を控えた日本は、その脅威を封じ込められるのか>

[ロンドン発]ワクチンの1回目接種が成人人口の8割、2回目は58%に達したイギリスでデルタ(インド変異)株の感染爆発が止まらない。1日当たりの新規感染者はついに9千人を突破した。英イングランド公衆衛生庁(PHE)の感染症担当スーザン・ホプキンス博士は6月16日、下院科学技術委員会でデルタ株の再生産数(R)は7に達する恐れがあると警告した。

Rは感染した人から何人に二次感染するのかを表した数字。ホプキンス博士は「デルタ株はアルファ(英変異)株に比べると広がり方が40~80%も増している。家庭内で感染する確率で66%、二次罹(り)患率も30~40%高い。何も対策を施さなかった場合、デルタ株のRは5以上、おそらく最大で7になる恐れがある」と証言した。

deltachart.jpeg

アルファ株とデルタ株の興亡(英政府資料)

アルファ株でもデルタ株でもないもともとの株のRは2.5。デルタ株はもともとの株より2.8倍感染しやすいことがRでも確認されたかたちだ。

ホプキンス博士は解説を続けた。「私たちはいま変異株の世界に住んでいる。私たちが直面しているすべての新型コロナウイルスはもともとの株から変異したものだ。生き残る変異株もあれば、すぐに絶滅するものもあるが、すべての変異株は感染力を増していたり、免疫回避の優位性を備えていたりする」

「現時点で25の変異株をモニターし、8つの変異株を調査している。こうした変異株が興ってきた時、どの変異株が何をするのか突き止めるのは非常に難しい。変異だけを観察していても、ワクチンの集団接種や入院による公衆衛生リスクにどのような影響を与えるのか予測するのには不十分だ」という。

正常化の7月19日以降も公共交通機関ではマスク着用へ

イギリスは当初、コロナ感染防止策を全面的に解除する6月21日を「自由記念日」と位置づけ、ワクチンの集団接種を進めてきた、しかしデルタ株の感染爆発で4週間後の7月19日に先送りした。新規感染者はこの1週間で5万5216人(前週比32%増)、入院患者も1250人(同41%増)となったものの、死者は66人と前週と同じだった。

ホプキンス博士は今後の見通しについて「(新たな自由記念日と位置づけられた)7月19日以降も、公共交通機関を15分以上利用する場合、マスク着用の義務化は継続されるかもしれない。しかし、飲食店内での行動など、たくさんのことが社会的責任に委ねられるだろう。公共交通機関以外のマスク着用も個人個人の判断に任せられる可能性がある」と話した。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

GMメキシコ工場で生産を数週間停止、人気のピックア

ビジネス

米財政収支、6月は270億ドルの黒字 関税収入は過

ワールド

ロシア外相が北朝鮮訪問、13日に外相会談

ビジネス

アングル:スイスの高級腕時計店も苦境、トランプ関税
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「裏庭」で叶えた両親、「圧巻の出来栄え」にSNSでは称賛の声
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 5
    セーターから自動車まで「すべての業界」に影響? 日…
  • 6
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 7
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 8
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 9
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 10
    日本人は本当に「無宗教」なのか?...「灯台下暗し」…
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 6
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 7
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story