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イギリスがデルタ株の感染再燃で正常化先送りなのに、G7参加の菅首相は「五輪開催」宣言
ユーロ2020はグラスゴーやロンドンなど欧州10カ国11都市で分散開催される。ローマで行われた11日の開幕試合ではイタリアがトルコに3-0で快勝した。数千人のファンがスタジアムに集まり、さらに多くのサポーターが開催都市のパブやバーに参集する。これまでにスペイン2人、スウェーデン2人、チェコ数人の選手のコロナ感染が分かっている。
昨年春の第1波で欧州が甚大な被害を出したのは、パスポートなしでシェンゲン協定加盟26カ国内を自由に行き来できたことが一因だ。それぞれの開催国によってワクチン接種や感染状況、観客の入場制限も異なる。ユーロ2020開催にゴーサインが出たのは欧州ではワクチン接種が進んでいることに加えて、サポーターの強い要望、正常化への期待があったからだ。
G7首脳会議に出席している菅義偉首相は東京五輪・パラリンピックに関し「子供や若者に夢や感動を伝えたい。東日本大震災からの復興を遂げた姿を伝える機会にもなる。安全安心な東京大会の開催に向けて万全な感染対策を講じ、準備を進めていく。世界のトップ選手が最高の競技を繰り広げることを期待する」と改めて開催する意思を表明した。
アフリカより選手村優先に疑問
一方、朝日新聞の世論調査では東京五輪の「中止」を求める声は43%、「再延期」が40%にのぼり、「今夏に開催」は14%にとどまっている。「1日100万回」を目指すワクチン接種は何とか60万回を超える日も出てきた。ウイルスは自分で動き回ることはできないため、人の移動に伴って感染していく。五輪開催で感染リスクが高まることは否めない。
世界保健機関(WHO)は「世界では21億回以上が接種されたが、アフリカはその1%に満たない。アフリカ大陸の人口約13億人のうち1回の接種を受けたのはわずか2%。2回接種を終えたのは940万人に過ぎない」という。このためG7ではワクチン10億回分を途上国に無償提供することで合意する見通しだ。
国際オリンピック委員会(IOC)は選手村に居住する関係者の8割超にワクチンを接種して五輪そのものを"集団免疫"する考えだが、途上国へのワクチン接種が全く進んでいないのに、商業化した五輪優先のワクチン接種が人道的に許されるのか。ワクチンの感染予防効果が分からない中、五輪が"ステルス感染"の震源地になる恐れも否定できない。
長期戦になり、コロナ患者を受け入れる医療現場の疲労の色は濃い。患者が増えるとすぐに逼迫する医療に国民の不安も膨らむ。政治と科学、政府と専門家の溝はどんどん広がっている。「五輪開催」という菅首相の政治決断に「安心安全」を支える科学的根拠は一体どれぐらい含まれているのだろうか。