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「集団免疫」を封印したイギリス 4カ月ぶりにパブの屋外営業再開で忍び寄る南ア株の影
観光客が戻っていないため、今回、屋外営業を再開できたのは、都心から少し離れたブリクストンの1号店だけ。着席での屋内営業が再開される5月17日に向け、「店を開くことにエネルギーをとられていますが、これから1カ月、まだまだ忙しい日が続きます」と表情を引き締めた。
ロンドンの高級住宅街メリルボーンで美容室「アトリエ・セオリー(atelier theory)」を経営する滝井淳さんも「再開準備ですでに疲れていますが、過労死しない程度に体にムチを打って頑張ります」という。
感染は60%激減も、現在は横ばいに
ボリス・ジョンソン英首相が予定通り、レストランやパブの屋外営業再開に踏み切ったのは、都市封鎖やワクチン接種で感染が激減したからだ。インペリアル・カレッジ・ロンドンの調査では、ウイルスに感染している人口割合はイングランド全域で今年2月の0.49%から3月には0.2%まで約60%も減少した。
中でも英変異株のエピセンター(発生源)となったイングランド南東部は0.36%から0.07%に、ロンドンも0.6%から0.16%に大幅に減少した。年齢層でみると、学校が再開された小学校の児童(5~12歳)が0.41%と最も高く、ワクチン接種が済んだ65歳以上は0.09%と最も低かった。
入院や死亡者も劇的に減り、同大学の報告書は「ワクチン接種が効果を上げている可能性がある。しかし、26日ごとに半減していた感染も下げ止まり、現在は横ばいになっているため、決して警戒を緩めてはならない」と釘を刺すのを忘れなかった。
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンは感染やワクチン接種によって免疫ができた人が壁になって新たな感染を防ぐ「集団免疫」に4月9日に到達するという予測を出していたが、最新の調査で同月26日に先延ばしした。しかし、イギリスでは「集団免疫」という言葉はタブーになってしまったようだ。
禁句になった「集団免疫」
昨年3月、パトリック・ヴァランス英政府首席科学顧問が感染封じ込めを早々とあきらめ、「集団免疫」という言葉を口にした結果、欧州最大の被害を招いてしまった。「集団免疫」という言葉にはイギリスやスウェーデンの例を出すまでもなく感染症対策を甘くしてしまう落とし穴が潜んでいる。
筆者が暮らすロンドンのランベスや、ワンズワースではワクチンの効果を弱める南アフリカ変異株の症例が44人から確認された。さらに30症例が南ア株の可能性があるという。英政府は市民全員に30分で結果が分かる迅速検査を週2度、自宅で実施するよう呼びかけており、南ア株をあぶり出して隔離する作戦だ。