コラム

コロナワクチン接種、イギリスでは59歳の筆者にも回ってきた!その現実

2021年02月12日(金)10時24分

イギリスの医薬品・医療製品規制庁(MHRA)は5日、副反応報告書(昨年12月~今年1月)を公表した。

それによると、ファイザー製ワクチンは540万人(うち2回接種は50万人)、英オックスフォード大学と英製薬大手アストラゼネカが開発・製造したワクチンは150万人に接種され、1千回につき3件の副反応やそれが疑われる事例(イエローカード)が報告されている。

イエローカードはファイザー製ワクチンが1万6756件、アストラゼネカ製ワクチンが6014件。どちらか分からないケースは50件。その多くは臨床試験でも報告されている注射部位反応(腕の痛みなど)、頭痛、悪寒、倦怠感、吐き気、発熱、めまい、脱力感、筋肉痛、動悸などだった。

重度のアレルギー反応、アナフィラキシーについてはファイザー製ワクチンの接種が始まった直後の昨年12月9日、2件報告された。このためNHS(国民医療サービス)はスクリーニングを強化するとともに接種後、15分間の観察時間を設け、心肺蘇生法やアナフィラキシーに対応できる看護師を現場に配置した。

アナフィラキシーやアナフィラキシーのような症状に関する報告はファイザー製ワクチンが101件。アストラゼネカ製ワクチンが13件。

ベル麻痺(顔面神経麻痺)の報告はファイザー製ワクチンで69件、アストラゼネカ製ワクチンで6件。しかし「自然に発症する割合と同じような率で、今のところワクチン接種によるリスク増加を示唆していない」という。

接種直後に143人死亡?

ファイザー製ワクチン接種直後に107人が亡くなった。アストラゼネカ製ワクチンでは34人が死亡。どちらのワクチンを接種したか分からない死者が2人だった。大半が高齢者や基礎疾患のある人で「接種と死亡の間に因果関係があったことを示唆していない」と報告書は結論付けている。

最大多数の最大幸福を実現できるワクチンも100%安全とは限らない。しかし、そのメリットは感染予防のほか、感染しても重症化せず、入院患者数を抑制し、死者を激減させることだ。ひいては医療の逼迫を防ぐことができるため、ロックダウン(都市封鎖)を回避して経済への影響を最小限に抑えることができる。

vaccines.jpg

新型コロナウイルスが変異を繰り返していけば、インフルエンザと同じように毎年、複数の変異株に対応できるワクチンを開発し、接種するようになるだろう。そして冬にはインフルエンザとコロナ対策のため欧米諸国でも公共スペースでマスクを着用する姿が新常態になるかもしれない。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、農務長官にロフラー氏起用の見通し 陣営

ワールド

ロシア新型中距離弾、実戦下での試験継続 即時使用可

ワールド

司法長官指名辞退の米ゲーツ元議員、来年の議会復帰な

ワールド

ウクライナ、防空体制整備へ ロシア新型中距離弾で新
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    巨大隕石の衝突が「生命を進化」させた? 地球史初期…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story