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ワクチン効果で「自由への道」を邁進するイギリスの4段階ロードマップ それでも新たな死者は5万4800人に
各段階で4週間様子を見て問題がなければ1週間後に次の段階に進むことを発表する。ジョンソン首相は昨年も同じように段階的に都市封鎖を解除したものの、ワクチンはまだ開発中で第二波を防ぐことはできなかった。しかも保守党内強硬派から突き上げられ、経済再開を優先して活動制限を緩和せざるを得なかった。
封鎖解除を急げば死者は最悪シナリオで14万6400人に
今回、同じ失敗を繰り返すわけにはいかない。「イギリスの8割おじさん」ニール・ファーガソン教授率いるインペリアル・カレッジ・ロンドンの専門家チームは4月26日までにすべての規制を解除した場合、今年2月~来年6月間の死者は9万1300人(5万2500~14万6400人)に達する恐れがあると警告する。
さらにウイルスの感染力が強まれば死者は15万4千人(9万6千~22万2400人)。ワクチンの有効性が低ければ14万6千人(8万2300~23万2100人)に犠牲は膨らむ。
しかし4段階ロードマップに従えば新たな死者を5万4800人(3万2600~8万2900人)まで抑制できる。ウイルスの感染力が強まれば9万8100人(5万8500~14万8100人)、ワクチンの有効性が低ければ9万4400人(5万8300~14万6700人)に犠牲は膨らむ。
ジョンソン首相は昨年3月、都市封鎖の実施をためらい、秋には2度目の都市封鎖が遅れた上に解除を急いだため、犠牲を不必要に拡大させてしまった。その反省からジョンソン首相はファーガソン教授をはじめ科学の声に謙虚に耳を傾けるようになった。
イングランド公衆衛生サービスによると、ファイザー製ワクチンを接種した65歳未満の医療従事者では1回接種で感染は70%以上減り、2回接種すると85%減少。80歳以上では1回目の接種後、3~4週間で発症は57%減り、2回接種では85%増も減少していた。
入院患者や死者はすべての年代で減り、1月中旬以降、最も高齢のグループでいずれも急速に減少。ファイザー製ワクチンの1回接種で入院や死亡は75%以上も減っていた。80歳以上で感染して死亡するリスクは1回接種後2週間で未接種者より56%、入院リクスも40%少なくなっていた。
アストラゼネカ製ワクチンを高齢者に接種した臨床データが不足していることから、EU加盟国が同ワクチンの有効性にあらぬ疑念を唱えている。このためジョンソン政権は高齢者を対象にしたアストラゼネカ製ワクチンの臨床データ収集を急いでいる。
今年、先進7カ国(G7)首脳会議と第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)のホスト役を務めるジョンソン首相は、ワクチンの集団予防接種による「集団免疫」獲得戦略を成功させ、EU離脱後のイギリスの存在感を世界に示す構えだ。
それに比べて「人類がコロナとの戦いに打ち勝った証として安全・安心の東京五輪・パラリンピックを実現したい」とG7オンラインサミットで誓った菅義偉首相のロードマップは全く示されないままだ。