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ワクチン接種「24時間態勢」で集団免疫獲得に突き進むイギリスの大逆転はなるか【コロナ緊急連載】
「バトル・オブ・ブリテン」は史上最大の航空戦として知られ、専守防衛に徹する航空自衛隊の作戦理論のモデルにもなった。昨年、「バトル・オブ・ブリテン」から80年が経ち、13歳の少女が連合国軍を勝利に導いたという秘話が英BBC放送で明かされた。
ナチスの台頭で欧州に暗雲広がる1930年代、イギリス製主力戦闘機「スピットファイア」と「ハリケーン」の開発が進められていた。ドイツ空軍の戦闘機や爆撃機を撃墜するには射程にとらえられる2秒間に200発以上の銃弾を撃ち込む必要があった。
スピットファイアとハリケーンの標準装備は機関銃4丁。それぞれ1分間に1千発発射できる。2秒間なら1丁につき33発。機関銃4丁なら133発、6丁なら200発、そして8丁なら266発撃ち込める。英空軍省のフレッド・ヒルはドイツ空軍との航空戦を制するには機関銃8丁の装備が不可欠と考えていた。
4丁を倍の8丁にすれば、その分機体は重くなり、上昇力や旋回能力など戦闘機の運動性が低下する恐れがあった。そこでヒルは、数学が得意だった娘のヘイゼルに機関銃を8丁にしても空中戦に負けないことを試算してもらうことにした。ヘイゼルは手回し式の計算機を使って、それを見事に証明してみせた。
独裁者ヒトラーは英本土上陸作戦の野望を抱いていたが、連合国軍はギリギリのところでバトル・オブ・ブリテンを制し、上陸作戦を断念させる。英空軍が妥協して機関銃を6丁にしていれば今ごろイギリスにはナチスの旗が翻っていたかもしれない。13歳の少女、いや科学への信念が歴史を変えたのだ。
科学力で巻き返すイギリス
本来、3週間2回打ちで有効性を高めなければならないワクチン接種を12週間2回打ちに切り替えたのもジョンソン首相の即興ではなく、科学の裏付けと助言があった。
緒戦で大きく躓いたイギリスの科学は着実に成果を上げている。ランダム化比較試験で重症患者にステロイド系抗炎症薬デキサメタゾンを投与すると死亡率が3分の1減ることを確認。米ファイザーと独ビオンテックが共同開発したm(メッセンジャー)RNAワクチンの緊急使用を世界に先駆け承認する。
ドイツを見習いPCRや抗体の大量検査を実施。統計サイト「データで見る私たちの世界(Our World in Data)」によるとイギリスの検査件数は1日1千人当たり8.75件。ドイツは2.06件、アメリカは4.59件。スタート地点はイギリスと同じだった日本は0.47件と検査数のスケールアップに完全に失敗した。