コラム

英ワクチン集団接種をいち早く可能にした周到な準備、日本は間に合うのか

2020年12月18日(金)10時41分

vaccinecenter1.jpg
センターに設けられた10カ所の接種ステーション(筆写撮影)

「最初の配達は今月15日にありました。17日に2回目の配達があり、3回目は19日の予定です。NHS病院の冷凍庫でワクチンは摂氏マイナス70度で保管されています。こちらのセンターで何人接種を受けるのかが分かると連絡し、2日かけて解凍したあと、病院からセンターに配達されてきます」

「センターの冷蔵庫で保存できるのはわずか3日半です。それを過ぎると効かなくなります。3つの小箱で接種できるのは2925回分。この地域には80歳以上が約1万人いるので、糖尿病など基礎疾患のあるハイリスクグループや致死率の高いアフリカ、カリブ系、アジア系から接種を始めました」

fridge.jpg
センターの冷蔵庫で保存がきくのは3日半。表示は摂氏5.9度だった(筆写撮影)

「今のところ介護施設や自宅から動けない高齢者には接種できていません。このセンターでは1週間で約3千人に接種します。しかし今後の予定はワクチンの供給次第。ワクチンの供給をいかに確保するかが一番大きな問題です。はっきりしたことはいつも最後の最後まで分かりません」

pfizer.jpg
看護師によってトレイに仕分けされた5回分の注射器とワクチン(筆写撮影)

「地元のGP(かかりつけ医のこと)診療所から医師や看護師らが応援に来てくれています。資格のある看護師2人がワクチンを希釈し、10人のスタッフが接種ステーションで問診を行ったあと注射しています。黄色のベストを着たボランティアが予防接種を受けに来た人を車イスに乗せるなどサポートをしています」

ワクチン忌避にどう対処するか

「対象者にはテキストメッセージや手紙で知らせています。アレルギーのある人や1週間以内にインフルエンザのワクチンを打った人などはスクリーニングで排除しています」

日本では2013年、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの悪影響の恐れが広く報じられた結果、70%の接種率が1%に低下する"事件"が起きた。

統計サイト「データで見た私たちの世界(Our World in Data)」によると、ワクチンを子供に接種するのは重要と答えた日本人は66.5%で163カ国・地域中、ワースト3。日本より低いのはモルドバの65.6%、ベラルーシの61.4%のみ。イギリスでも「ワクチン忌避」が広まっていないか、ターカー医師に尋ねてみた。

「イギリスでも子供の予防接種を躊躇したり拒否したりするワクチン忌避の問題があります。世界のどの地域の出身かにもよるのですが、特に東欧から来た移民は子供に予防接種を受けさせるのを嫌がったり神経質だったりします。私たちは彼らが何を心配しているのかを理解し、予防接種の重要性を伝えています」

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル安定的、円相場160円に接近 中

ワールド

トランプ氏、イラン「一夜で壊滅」も 米兵救出報道の

ビジネス

米国株式市場=上昇、トランプ氏発言と米・イラン協議

ワールド

アルテミス2の宇宙船オリオン、人類の最遠到達記録を
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 3
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙の2大テーマでAI懸念を払拭できるか
  • 4
    地面にくねくねと伸びる「奇妙な筋」の正体は? 飛行…
  • 5
    トランプ、イランに合意期限「米東部時間6日午前10時…
  • 6
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 7
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 8
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 9
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 10
    スパイス企業の新戦略...エスビー食品が挑む「食のア…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 3
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 4
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 5
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 8
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 9
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 10
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの…
  • 6
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story