コラム

韓国大統領選で見えた「世代間対決」

2017年04月28日(金)16時00分

「共に民主党」の文在寅(左)と、「国民の党」の安哲秀(右)REUTERS/Kim Min-hee

<韓国大統領選挙(5月9日投開票)は、優勢が伝えられる「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)と、「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)に絞られた。元IT起業家の安哲秀をなぜ高齢者が支持しているのか・・>

韓国の大統領選挙が佳境に入っている。

朴槿恵(パク・クネ)が所属していた保守セヌリ党は二つに分裂。どちらの候補も支持率は伸び悩んでおり、野党勢力同士の戦いになりそうだ。

現在では最大野党の「共に民主党(以下、民主党)」の文在寅(ムン・ジェイン)と、「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)のほぼ一騎打ちになっている。

最有力視されている文在寅は、2012年の大統領選挙で朴槿恵に僅差で負けた進歩政党の候補者。故・盧武鉉大統領の右腕だった人物で元人権派の弁護士として知られる。韓国の左派系政治家の本流と言える人物だ。

そこに対抗しているのが、支持率2位の安哲秀だ。日本では今回の大統領選に関する報道で、名前を初めて耳にした人も多いだろう。

安哲秀はあえて位置づけをするならば中道左派で、アンチ保守でありながら既存の民主党勢力に物足りなさを感じる若者を中心に支持を集めてきた人物だ。

しかし現在の世代別支持率を見ると、安哲秀は高齢層の支持を集めている。むしろ20〜40代では文在寅が圧倒的に支持率が高い。

有力2候補の世代別支持率
kim0428a.jpg

データ参照:韓国ギャラップ 4月21日
 

こういった支持層の変動の背景には、韓国における社会認識の世代間格差問題が横たわっている。

政治とは無縁だった安哲秀

安哲秀は医者を務めながらアンチウィルスソフト開発を手がけるという、異色の経歴を持つ人物。後に医者を辞め、韓国最大規模のITセキュリティ会社を立ち上げたのだが、政治とは無縁だった彼がどのようにして大統領候補になったのか。

安哲秀はソフト開発に止まらず、韓国におけるITセキュリティという意識を啓蒙した人物とも言える。最新のセキュリティソフトを個人向けに無料配布したほか、韓国の「2000年問題」は彼が解決したとも言われている。韓国で使われているアンチウィルスソフトは、ほぼ彼の会社の製品だ。

彼の名が広く知られるようになったのは、テレビのトーク番組に出演したことがきっかけだった。技術開発にも起業にも成功したカリスマ社長であるだけでなく、社会的に意義のある活動をしたことで、韓国の若者のスター的な存在になった。彼が主催した若者向けのフリートークショー「青春コンサート」は、年間3000件もの依頼が殺到するほどの人気を集めた。

プロフィール

金香清(キム・ヒャンチョン)

国際ニュース誌「クーリエ・ジャポン」創刊号より朝鮮半島担当スタッフとして従事。退職後、韓国情報専門紙「Tesoro」(発行・ソウル新聞社)副編集長を経て、現在はコラムニスト、翻訳家として活動。訳書に『後継者 金正恩』(講談社)がある。新著『朴槿恵 心を操られた大統領 』(文藝春秋社)が発売中。青瓦台スキャンダルの全貌を綴った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国の尹政権、補正予算を来年初めに検討 消費・成長

ビジネス

トランプ氏の関税・減税政策、評価は詳細判明後=IM

ビジネス

中国アリババ、国内外EC事業を単一部門に統合 競争

ビジネス

嶋田元経産次官、ラピダスの特別参与就任は事実=武藤
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story