コラム

中国のバブル崩壊は、80年代の日本とそっくり...国際的「影響力」が低下しないところも同じだ

2023年10月04日(水)17時40分
中国の不動産大手「碧桂園」

TINGSHU WANG-REUTERS

<社会が豊かになることによる成長鈍化という構造的要因により、バブルは事実上、崩壊したとの見方がほぼ確定的となっている>

中国経済が苦境に陥っている。直接的な原因は過剰に膨れ上がった不動産バブルの崩壊だが、背景には、かつての日本と同様、社会が豊かになることによる成長鈍化という構造的要因がある。

中国では不動産市場の過熱が指摘され、いつバブルが崩壊してもおかしくない状態が続いてきた。これまでは当局の舵取りで何とか事態を収拾してきたが、恒大集団や碧桂園など不動産大手の経営危機が表面化したことで、バブルは事実上、崩壊したとの見方がほぼ確定的となっている。

中国の不動産バブルと日本の1980年代バブルはよく似ている。日本は戦後、工業製品の輸出で経済を成長させてきたが、日本企業の激しい輸出攻勢によって多くのアメリカ企業が苦境に陥り、対日批判が一気に高まった。

アメリカの報復を恐れた日本政府は内需拡大策を表明。この結果、国内経済が過度に喚起され、余剰マネーが不動産や株式に集中し、バブルが発生した。日本はバブル処理に失敗したことで、30年にわたって経済の低迷が続いている。

とうとうバブル崩壊の引き金を引いてしまった

中国も日本と同じように工業製品のアメリカへの輸出で経済を成り立たせてきたが、米中対立の深刻化によって中国の対米輸出は滞りつつある。習近平政権は日本と同様、内需拡大策への転換を図り(中国政府は「双循環経済」と呼ぶ)、国内投資を活発化させたが、不動産価格が過度に上昇し、とうとうバブル崩壊の引き金を引いてしまった。

バブルの後始末次第だが、中国と日本の道のりはよく似ており、中国が今後、長期の低成長時代を迎える可能性は高い。工業製品の輸出で経済を伸ばした新興国が豊かになると成長が鈍化し、その傾向が長期にわたって続くという現象は「中所得国の罠」と呼ばれており、各国に共通して見られるものだ。

一般的に現在の価値で1人当たりGDPが1万ドルを超えると成長鈍化が始まるとされており、中国はまさに今、そのタイミングに差しかかっている。おそらくだが、今後の中国経済は、5年から7年にわたって2~3%程度の低成長が続くと予想される。

日本は中国と政治的に対立する一方で、経済面で中国に依存するという矛盾した関係を続けている。中国が長期の低成長に入った場合、同国への依存を改めない限り、日本が受ける影響は極めて大きなものとなるだろう。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

貿易分断で世界成長抑制とインフレ高進の恐れ=シュナ

ビジネス

テスラの中国生産車、3月販売は前年比11.5%減 

ビジネス

訂正(発表者側の申し出)-ユニクロ、3月国内既存店

ワールド

ロシア、石油輸出施設の操業制限 ウクライナの攻撃で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story