コラム

住宅購入、人口減少時代でも「負動産」にならない物件を選ぶには?

2019年10月23日(水)18時29分

タワマンの良し悪しは立地次第 K2_keyleter-iStock

<賃貸、分譲、戸建て、条件、タイミング......人生の後半に大きな影響を及ぼす「住宅論」に正解はあるか>

賃貸か持ち家か、戸建てかマンションかという選択は、いつの時代においても議論の的となってきた。

この話は世帯によって条件が変わるので、全員に当てはまる唯一の解答は存在しない。まずは時代の大きな流れをつかみ、その上で、世帯の状況に合わせて個別に判断する必要がある。

かつては老後のことを考えると持ち家は必須という考え方が主流だったが、状況は大きく変わった。説明するまでもなく、日本は今後、人口が急速に減っていく。一方で新築マンションは次々と供給されているので、近い将来、空き家が急増するのは間違いない。

以前は高齢者や女性の単身者が家を借りられないという問題があり、一部ではそうした古い慣習が残っているが、今後は家を借りられないというケースは減ってくるだろう。従って、老後対策から持ち家にすべきであるという話は、必ずしも成立するとは限らなくなる。

だが、賃貸のままで全く問題ないのかというと、そうもいかない。年金2000万円問題をきっかけに改めて年金減額の是非が議論されているが、近い将来、年金の給付水準は現状と比較して2~3割程度、下がる可能性が高い。現時点においても、年間150万円以下しか年金をもらっていない人は年金生活者全体の6割に達する。

政府は70歳までの雇用延長を目指しており、今後はほぼ一生涯、働き続けることもできるだろうが、体力的な問題もあるので現実はかなり厳しいだろう。年金だけの生活になった場合、家賃への支出があると可処分所得が大幅に減ってしまう。

つまり賃貸か持ち家かという議論は、人生後半戦のキャリア形成や資産額に大きく依存する。もし老後のことが心配なら、思い切って持ち家にしたほうが安心かもしれない。

だが、昭和や平成の時代と同じ感覚で不動産を購入するのは非常に危険であり、「不動産」ならぬ「負動産」を背負い込むことにもなりかねない。ここでも重要となってくるのが人口減少というキーワードである。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは155円半ばでもみ合い、日米金融政

ワールド

豪GDP、第3四半期は前年比+2.1% 2年ぶりの

ビジネス

豪GDP、第3四半期は前年比+2.1% 2年ぶりの

ワールド

インドのサービスPMI、11月は59.8に上昇 輸
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 2
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 3
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 4
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 5
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 8
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 9
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 10
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story