「プリゴジンの乱」で、プーチン早期退陣の可能性が出てきた
「ミシュスチン大統領代行」の可能性
となると、ミシュスチン首相が最も自然な禅譲相手。大統領が執務不能の場合の代行は首相、と憲法で定められているからだ。また、彼は元国税庁長官で、経済のマネジメントに優れているし、2020年1月首相就任以来、権力の黒幕FSBとも信頼関係を築いているだろう。
西側のマスコミでは、プーチンの後任として、シロビキの親玉であるニコライ・パトルシェフの息子、ドミトリー・パトルシェフ農業大臣が云々されることが増えている。まだ経験不足だと思うが、6月14日には国賓として来訪したテブン・アルジェリア大統領を空港に出迎えている。
7月11日にはリトアニアでNATO首脳会議がある。今のところ、ここではNATOのウクライナ支援の限界が明らかになる情勢だ。ここまでロシアは静かにしているのが得策。そして夏、西側諸国の関係者が皆休暇に出て、緊急対応がしにくい時を狙ってプーチンは退陣。「大統領代行」が「逆逆攻勢」を開始する、という寸法だ。
ロシア軍のメルト・ダウン? 「動乱時代」へ?
話しは続く。で、逆逆攻勢を開始すると、消耗しているウクライナ軍は抵抗できないかもしれない。しかしこの時、天祐が働く。と言うのは、ロシア軍、国防省の上層部ががたがたになって、派閥闘争も生じている可能性があるので、そういう時ロシア軍の兵士は「自主性」を発揮することがあるからだ。第1次大戦の時、本国首都の情勢が流動化する中、上官を射殺したり(これは自衛隊でも同じ)、勝手に故郷に帰ってしまう兵まで続出している。
26日付のBBCロシア語ニュースは、「何が何だかわからない混乱期が到来するかもしれない。17世紀初頭の『動乱時代』のような時期が10年以上続き、予測不能で核兵器も持つロシアは、世界にとって危険な存在になるだろう」と書いている。
不幸な生い立ちプーチンの『砂の器』
6月10日付の英エコノミスト誌は面白い記事を掲載している。プーチンの実の母親はベラ・プチーナと言って、5月31日ジョージアの寒村で97歳で亡くなったとしている。彼女はロシアにいた頃、大学のパーティーで知り合った男と一夜を過ごしてプーチンを懐妊。その後ジョージアの兵士と結婚して、ジョージアに移住。プーチンは一緒にいたが、9歳の時、ベラの両親のもとに厄介払いされた。ところがこの両親(祖父母)は病身で、プーチンを軍の寮に送り、その後ベラとの音信は途絶えた、というのだ。
これはまるで松本清張の小説、映画『砂の器』のような可哀そうなロマン。暗い思い出を抱えた男が名声を博すも、追いつめられて殺人を冒すという物語。プーチンは戦争犯罪を犯して、国際刑事裁判所のお尋ね者となり、うっかり海外に出られない。これではロシアの外交は麻痺してしまう。これもまた、ロシアの保守エリートたちが「彼を更迭する」理由の一つになるだろう。
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