コラム

「人間のライターはもう不要」? チャットGPTにロシアの記事を書かせてみた

2023年05月30日(火)14時35分

チャットGPTはフリーズするときがある。熟考しながら、一字一字慎重に回答してくるときもある。

「君に名前はあるか?」と聞いたらフリーズして、20秒もたっただろうか、「私はチャットGPTと呼ばれるAIモデルです。名前を持つわけではありませんが、あなたが呼びたい名前があれば、それを使っても構いません」という回答が返ってきた。

自分を人間と想定することはチャットGPTの論理回路に埋め込まれていなかったのだろう。今では名前もすらすらと答えるようになった。

チャットGPTはデータ集めには適している。

例えば、「20年時点でのロシアの輸出における主要相手国のシェアを調べるのに、最も信頼できるソースのURLを教えて」と英語で聞くと、ロシア関税局などのURLを教えてくれて、これはばっちり。日本語では、「これを自分で調べろ」式の答えだった。

では、この質問はどうか? 

「南千島(北方領土)は日本、ロシアのいずれに属するか?」。チャットGPTは、歴史的経緯、両国の立場をかいつまんで説明、その後「自分はAIモデルなので、領有権の判断はできません。外交交渉で解決してください」と逃げた。

チャットGPTは自分で物事を判断しないのかというと、そこは微妙だ。するときもあれば、しないときもある。例えば「ロシアは西欧、ビザンチン、ペルシャ、そのいずれの文明圏に最も近いか?」という質問をすると、きちんと答える。そして答えは日本語、英語でかなり違った。

日本語では、「ロシアは主に西欧・ビザンチン・東欧文化圏」と答える。一方で英語では、「1つを選べと言われるならビザンチン」とはっきり述べ、その理由を説明してきた。

つまり、物事を自分で判断したように見せることは、かなりできる。あるいは、その「判断」はどこかで見つけたものだろうか。

そこでどうやってデータを集めているのだろうと思い、「ロシアについて日本語で調べるのに最適なサイトを教えてください」と聞いたところ、在日ロシア大使館のものなど、ごくありきたりのものを教えてきた。しかしチャットGPTがそれだけで答えを書いているとは思えない。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請、3.3万件減の23.1万件 予

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

UAE、イスラエルがヨルダン川西岸併合なら外交関係
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story