コラム

国家元首かアイドルか......人権なき「天皇制」の未来は

2019年03月28日(木)18時00分

さりとて、例えば違憲の疑いがある法律に署名しないなど、天皇に実質的な権限を認める、あるいは逆に天皇制を廃止するなどの動きが起きた途端、天皇は左右に対立する諸勢力による政争の核となり、社会の分裂を起こしかねない。

天皇制を21世紀の日本社会に近いものにするには、どんなことができるだろう。大嘗祭など祭祀の改革も1つだ。実際、祭祀は時代を追って変容しており、改変をやたらタブー視するべきものではない。

さらには、全国の古墳の発掘調査を大胆に認めることで、日本史の実像を明らかにしてはどうだろうか。奈良の古墳から近年相次ぐ出土品は、古代王朝とユーラシア大陸とのつながりを余すところなく明らかにしている。日本の歴史の実像を明らかにすれば、中国や朝鮮半島に対する日本人の気持ちも、もっとおおらかなものになるはずだ。

こうしたことで社会の風通しを良くすれば、若者も天皇や天皇家に対して、神話から解放された自然な敬愛、親しみの感情を持つようになるだろう。

<本誌2019年04月02日号掲載>

20190402cover-200.jpg

※4月2日号(3月26日発売)は「英国の悪夢」特集。EU離脱延期でも希望は見えず......。ハードブレグジット(合意なき離脱)がもたらす経済的損失は予測をはるかに超える。果たしてその規模は? そしてイギリス大迷走の本当の戦犯とは?

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

台湾周辺の中国軍事演習、不安定化招く G7外相が懸

ワールド

ロシア軍、ウクライナ北東部スムイ州に侵入 国境付近

ビジネス

50カ国超が通商協議希望とトランプ政権高官、関税政

ビジネス

不確実性の「劇的な高まり」悪化も=シュナーベルEC
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描か…
  • 8
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡…
  • 9
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story