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「主導者なき」エジプト反政府デモの背景には、貧困という時限爆弾がある
アルジャジーラはエジプト革命後に政権を取ったムスリム同胞団に近い放送局で、これまでもシーシ政権を批判してきた。アルジャジーラが拠点を置くカタール自体が、エジプトの同胞団やパレスチナのハマスなど、アラブ世界の同胞団勢力を支援してきた国だ。シーシ政権にとっては、カタール政府とアルジャジーラは政治的な対抗勢力である。
ただし、ナフィア教授は同胞団出身のムルシ政権時代には同胞団の独善的な手法を批判した人物であり、バランスのとれた政治学者として海外のメディアでも信頼がある。私も特派員時代には何度もインタビューをした。
エジプトでの大規模な拘束はデモ参加者だけでなく、ナフィア教授のような言論人、ジャーナリスト、人権活動家などを含み、アムネスティ・インターナナショナルなど国際的な人権組織から言論弾圧として批判が上がっている。
今回のデモにはムスリム同胞団のような政治勢力は関わっていない。政治的な背景はなく、生活に根差した不満が背景にあるとみるべきだろう。今後の焦点は、デモが続き、拡大していくかどうかである。
拡大していくとすれば、シーシ大統領は「貧困拡大」という失政の責任を問われ、厳しい立場に立たされることにもなりかねない。今回デモを抑え込むことができたとしても、国民の間の不満や怒りはいつ噴出するかは分からない。そんな「時限爆弾」として抱え込み続けることになるだろう。
※10月15日号(10月8日発売)は、「嫌韓の心理学」特集。日本で「嫌韓(けんかん)」がよりありふれた光景になりつつあるが、なぜ、いつから、どんな人が韓国を嫌いになったのか? 「韓国ヘイト」を叫ぶ人たちの心の中を、社会心理学とメディア空間の両面から解き明かそうと試みました。執筆:荻上チキ・高 史明/石戸 諭/古谷経衡
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